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不妊治療では座薬を使うことがあります
不妊治療では黄体ホルモン(プロゲステロン)を補充することと、子宮内膜を着床しやすくする目的で座薬を使うことがあります。
座薬というと肛門から挿入するイメージが強いですが、生殖補助医療(ART)で使用する座薬は膣から挿入するタイプの座薬になります。
不妊治療を繰り返すと黄体ホルモンは徐々に分泌量が低下していくので、座薬を使って黄体ホルモンを補充することが必要です。
以前は、注射薬は経口薬によって補充していましたが、注射薬では何度も通院しなければならず、経口薬の場合は肝臓で分解・代謝されてしまいます。
挿入された座薬は体温によって軟化し、やがて溶けて体内で効果を発揮します。
黄体ホルモンは女性ホルモンのひとつです
黄体ホルモンは卵巣から分泌されている女性ホルモンで、妊娠したり、妊娠を継続させたりする働きを持つホルモンとして知られています。
体温を上げ、受精卵が着床しやすいように子宮内膜の環境を整えるため、妊娠を望む女性には欠かせないホルモンであると言えます。
排卵後に次の生理が始まるまでのおよそ2週間が、黄体期と呼ばれる期間です。
黄体ホルモンには受精しやすくなるように体温を上げるので、黄体ホルモンの分泌量がピークとなる黄体期には基礎体温が高温期を迎えます。
受精卵が着床するために必要な子宮内膜の厚さは5~8mmとされ、排卵期の前後になると10~15mmになると言われています。
黄体ホルモンは排卵後に子宮内膜の血流を促進させ、子宮内膜に充分な栄養素を送り届けた上で着床しやすい環境に整えます。
排卵日になるまでは黄体ホルモンの分泌量はさほど多くありませんが、排卵した後に卵胞が黄体に変化することで、分泌量が大幅に上昇します。
また黄体ホルモンには乳腺を発達させ、妊娠するための身体の準備を行う働きもあります。
座薬を使う際にはいくつかの注意点があります
不妊治療で使われる座薬には妊娠に必要な黄体ホルモンを補充するという目的がありますが、薬剤である以上、使用にあたっての注意点がいくつか存在します。
座薬の性質について知ることで、不妊治療の過程で使用することになった場合に治療がスムーズに進むように備えておきましょう。
まず過去に座薬でアレルギー反応を起こしたことがある人は、この座薬を使用することができません。
副作用を回避するためにも問診の際は医師に正確に答えるようにし、不安な点についてもきちんと伝えるようにしましょう。
膣に挿入してから20~30分は入浴や運動はもちろんのこと、歩くことも控えて安静にする必要があります。
トイレに行ってしまうとせっかく入れた座薬が出てきてしまうので、トイレを済ませてから座薬を使った方がよいでしょう。
また座薬を挿入した後におりものが出る場合があるため、おりものシートを使うと安心です。
もし座薬が出てきてしまっても、すでに成分が身体に吸収されているので入れ直しても問題はありません。
挿入する角度を変えてみたり、姿勢を変えてみたりすることでスムーズに挿入しやすくなります。
緊張していると身体に余計な力が加わり、挿入しづらいことがあります。
どうしてもうまくいかない時は、医師に相談して挿入の仕方を尋ねてみましょう。
生活習慣を見直して黄体ホルモンを増やしましょう
体内で作られる黄体ホルモンは、黄体ホルモンの分泌を促す習慣を身につけることで分泌量が増えやすくなります。
座薬の使用とあわせて生活習慣を見なおすことで、黄体ホルモンの分泌を活性化させましょう。
ビタミンEは偏った食生活をしない限りは不足しにくい栄養素ですが、外食や偏食が多いと不足することがあります。
アーモンドなどのナッツ類、野菜ではカボチャやモロヘイヤなどはビタミンEを豊富に含み、油分と一緒に摂取することで吸収率が上がります。
黄体ホルモンの分泌には脳が関わっているため、ストレスを溜め込んでしまうと脳の指令が行き届きづらくなります。
ストレス解消を意識し、身体に負担にならない程度の運動をして気分転換をしましょう。
(まとめ)不妊治療では座薬を使う?
不妊治療では黄体ホルモンを補充し、子宮内膜を着床しやすくする目的で座薬を使用することがあります。
注射薬では投与のために頻繁に通院しなければならず、経口薬は肝臓で分解・代謝されてしまうことから、座薬が用いられています。
黄体ホルモンは卵巣から分泌される女性ホルモンのひとつであり、妊娠の成立と継続に関わっています。
着床しやすくなるように体温を上昇させて血流をよくし、栄養素を届けることで子宮内膜を厚くします。
黄体ホルモンは排卵後に分泌量がピークに達します。
不妊治療に使われる座薬で過去にアレルギー反応を起こしたことがある場合は、副作用のリスクが高いため使用することができません。
座薬の挿入後20~30分は安静が必要となるので、歩行や入浴、運動などは避けましょう。
座薬の使用とあわせて、生活習慣を見なおすことで黄体ホルモンの分泌を高められる可能性があります。
普段の食事からビタミンEを摂取し、適度な運動でストレスを解消することが効果的です。