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不妊治療のグレードとは胚のランクを示すものです
不妊治療の体外受精では、複数の卵子を取り出して受精させます。
同じタイミングで受精させた卵子でも発育がよい胚・優れない胚が出てくるため、良好胚の選択が必要です。
この時に使用する判断基準のことをグレードと呼んでいます。
グレードがよいものを使うほど着床率が高まるため、不妊治療を成功させるためには重要な概念です。
初期胚のグレードは5段階評価です
採取した卵子と精子を受精させてから1~3日くらいたち、細胞分裂を起こしたものが初期胚です。
初期胚は、分割状態やフラグメンテーション(細胞の破片)の多さによって、5段階のグレードに分けられます。
それでは、それぞれのグレードの状態について詳しく説明しましょう。
- グレード1
均等に細胞分裂が起こっていて、フラグメンテーションが見られない胚を指します。 - グレード2
均等に細胞分裂が起こっているものの、わずかにフラグメンテーションが見られる胚です。 - グレード3
割球(細胞分裂した後のそれぞれの細胞)が不揃いで、わずかにフラグメンテーションが見られる胚です。 - グレード4
割球が不揃いもしくは均等で、かなりのフラグメンテーションが見られる胚です。 - グレード5
細胞分裂がほとんど見られず、フラグメンテーションだけで中が埋まった胚を指します。
グレード1が最も妊娠確率が高い胚と判断されて、優先的に移植に使うことになります。
5分類でグレードを評価する方法のほかに医療機関独自の判断基準を採用するケースもありますが、移植に適合する胚を選ぶ目的としては同じです。
胚盤胞のグレードは6段階評価です
初期胚段階からもう少し培養、胚盤胞の状態にしてから移植を行う方法もあります。
胚盤胞まで育った受精卵には別の基準が適用されて、グレード1から6の6段階評価とするのが一般的です。
成長が進むと胞胚腔が広がっていくところに注目、どの段階まで育っているかで分類されます。
- グレード1
胚胞腔が容積の半分未満で、初期胚盤胞と呼ばれる状態です。 - グレード2
胚胞腔が容積の半分を超えて、初期胚盤胞よりもわずかに成長した状態です。 - グレード3
胚胞腔が容積を完璧に満たすところまで成長、完全胚盤胞になったものです。 - グレード4
胚胞腔がさらに大きくなって外側を包む透明帯が薄くなり、拡張胚盤胞になったものです。 - グレード5
栄養外胚葉が周りを包む透明帯から一部飛び出し、孵化を始めている状態です。孵化中胚盤胞と呼ばれます。 - グレード6
胚胞腔が完全に透明帯を脱出して、孵化が完了した状態です。孵化後胚盤胞と呼ばれます。
グレード3以上の胚盤胞を良好胚と判断するケースが多く、胚盤胞移植に使用することができます。
胚盤胞まで育てたものを移植することにより着床率が高まり、妊娠に寄与する選択肢と言えるでしょう。
グレード3以上の胚盤胞はA~Cに分類されます
胚盤胞の評価でグレード3以上とされたものは、さらに細かくランク付けを行います。
ランク付けの基準になるポイントは、内細胞塊と栄養外胚葉です。
内細胞塊が将来胎児になる部分にあたり、大きくてしっかりとしたものほど良質と判断されます。
栄養外胚葉とは将来胎盤になる部分を指し、均等なサイズがたくさんあるほど良質です。
内細胞塊と栄養外胚葉のそれぞれにA~Cの3段階評価を行って、「3AA」や「3BB」というように示します。
「3AB」と書かれていたら、「グレード3・内細胞塊はA評価・栄養外胚葉はB評価」ということです。
内細胞塊と栄養外胚葉では後者がしっかりしている方が妊娠率が高まると考えられるため、「3AB」より「3BA」のほうが良質と判断できます。
3BB以上の胚盤胞を良好胚と考えて、移植用に活用するのが一般的です。
ただし、良好胚がどうしても得られない場合は3CCでも移植することがあるようで、医療機関の判断に左右されます。
胚盤胞まで成長する胚がなかった場合は移植がキャンセルになるケースもあり、確実に先のステップに進めるとは限りません
(まとめ)不妊治療で耳にするグレードってどんな意味?
不妊治療におけるグレードとは、良質な胚を選択する基準です。
同じタイミングで受精させても成長度合いには差があって、もっとも妊娠しやすいと考えられるものを選択する際に必要となります。
初期胚のグレードは、グレード1からグレード5の5段階評価がなされます。
均等に細胞分裂が起こってフラグメンテーションが少ないものほど高い評価となり、優先的に移植に使われる初期胚です。
初期胚からもう1段階成長させたものを胚盤胞と呼び、この段階まで育ててから移植に使う方法もあります。
胚盤胞のグレードは、グレード1からグレード6の6段階評価です。
グレード3以上まで育つことが移植に活用できる条件とされます。
グレード3以上の胚盤胞は、内細胞塊と栄養外胚葉に対してさらにA~Cの3段階評価がつけられます。
3AAや3BBと表記がなされて、細かいグレードに分かれるところが特徴です。
栄養外胚葉がより重要で、3ABより3BAのほうが良質とされます。