体外受精や顕微授精は、受精卵(胚)を子宮に移植して妊娠を目指す不妊治療です。受精が難しい場合や、人工授精のステップアップとして広くおこなわれています。
しかし、胚移植を繰り返しても着床しないケースがあり、その原因のひとつとして「着床障害」が考えられます。

この記事では、着床しにくい人の特徴や原因、検査方法について解説します。

着床障害(着床不全)とは?

着床障害とは、複数回にわたって受精卵(胚)を子宮に移植しても着床せず、妊娠に至らない状態のことです。反復着床不全とも呼ばれます。

一般的に、40歳未満の女性が体外受精で4回の胚移植をおこなった場合、8割以上の方が妊娠に至るとされています。
当院では、2回以上の胚移植で妊娠に至らない場合に、検査や治療をご案内しています。

着床しにくい人の特徴とは?

体外受精の妊娠率は一般的に、回数を重ねるごとに増加します。一方で複数回トライしても、なかなか妊娠に至らない方もいらっしゃいます。また、自然妊娠を目指して妊活に取り組んでいる方でも、妊娠できない原因として着床障害が関与している場合があります。

ここでは着床しにくい方に見られる特徴を解説します。
着床率を上げる方法については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
> 「体外受精の着床率を上げるには?知っておきたいポイントと生活改善策」を読む

子宮や子宮内膜、卵管に問題がある

子宮の形状や子宮内膜に問題がある場合、着床が難しくなることがあります。具体的には、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、帝王切開瘢痕症候群といった疾患が原因となっていることがあります。

また、卵管に問題がある場合は、精子が卵子までたどり着けなかったり、受精卵(胚)が子宮までたどり着けず、結果として妊娠できないケースもあります。卵管の詰まりや狭まりが原因の場合は、体外受精や顕微授精が有効な不妊治療となります。

月経異常がある

月経不順や重い月経痛がある、経血の量が多い、少ないなどの月経異常がある場合、婦人科系の疾患が隠れていることがあります。特に子宮内膜炎やポリープなどは、着床を妨げる原因になります。

また、無排卵月経の場合はそもそも排卵がないことで受精ができず、その後の着床・妊娠もできないことになります。
不妊治療や妊活の前に、検査や治療が必要になることもあります。

太りすぎ、または痩せすぎている

肥満や過度なダイエットなどでホルモンバランスが崩れ、月経異常や排卵障害が生じることがあります。極端に太っている、痩せている状態は不妊の原因にもなりうるため、適正な体重・体型を保つことが大切です。

加齢により妊孕性が低下している

妊孕性(妊娠のしやすさ)は、加齢により低下します。特に35歳以上になると急激に低下する傾向にあり、着床率も同様に低下するといわれています。

過度なアルコール摂取や喫煙の習慣がある

お酒やタバコの習慣がある方は、卵巣機能の低下や排卵障害となる可能性が高まります。妊娠率が低下し、流産率も増加します。着床に成功しても、妊娠を維持できず流産してしまうリスクがあります。
そのため、お酒やタバコの習慣は、不妊治療前から見直す必要があります。

着床障害の原因とは?

妊娠における着床は複雑なプロセスを経て進みます。そのため、原因特定が難しい場合もありますが、主な原因は「子宮側の問題」「受精卵(胚)側の問題」、そして「その他の要因」の3つに分けられます。

子宮側の原因

子宮の疾患(子宮筋腫・子宮内膜ポリープ、子宮内膜炎など)によって着床障害が起きていることがあります。また子宮の受精卵を受け入れるタイミング(着床の窓)のズレで、着床に至らないこともあるといいます。

これらの問題は子宮内環境に起因するため、子宮鏡検査などで根本的な原因を特定することが重要です。

受精卵(胚)側の原因

受精卵(胚)の染色体異常がある場合、着床できないことがあります。また、着床できても流産してしまうリスクが高まります。

染色体の異常を治療する術はありませんが、着床前診断で染色体の異常を事前に把握することは可能です。ただし、着床前診断は重篤な遺伝子性疾患がある場合にのみとされています。

その他の原因

その他に考えられる原因は、母体の血液や免疫系に異常があるケースです。母体側には、受精卵(胚)を受け入れる力(免疫寛容)が必要となります。しかしホルモンや血液、免疫系に異常があると、受精卵を異物として捉えてしまい、着床障害となることがあります。

着床障害の検査にはどんなものがある?

着床障害の治療を進める前に、まずは検査で原因を特定します。子宮環境や疾患の有無、免疫寛容性を調べるためにさまざまな検査があります。

子宮内膜受容能検査(ERA)

ERA検査は「着床の窓」と呼ばれる、子宮が受精卵を受け入れるタイミングを遺伝子レベルで解析する検査です。子宮内膜の着床の窓は個人差があり、胚移植に最適な時期や状態で移植することで着床率を上げられる場合があります。

EMMA/ALICE検査、子宮内フローラ検査

EMMA/ALICE検査は、子宮内膜の一部を採取し、子宮内膜の状態や子宮の細菌環境を調べる検査です。細菌感染、子宮内膜炎の有無がわかります。

子宮内フローラ検査は、妊娠率に関わるラクトバチルス属菌の割合を確認する検査です。ラクトバチルスが多い子宮内環境の方が、着床・妊娠によいとされています。

超音波検査

不妊治療でおこなわれる、最も基本的な検査が超音波検査です。卵胞チェックの際も使用されます。
子宮の形、子宮内膜の厚さを確認できる他、卵巣や子宮の疾患や異常なども調べることが可能です。

子宮鏡検査、子宮内膜組織検査

超音波検査と同様に、子宮の形や疾患などを調べられる検査です。子宮鏡検査の場合、子宮内の組織や子宮内膜の一部を採取することも可能です。

CD138検査

CD138検査は子宮内膜の一部を採取し、CD138陽性細胞という細胞の数を調べ、慢性子宮内膜炎を診断する検査です。CD138陽性細胞が複数確認できた場合、細菌感染が原因で炎症を起こしていると判断できます。

免疫検査

母体の免疫機能を調べる血液検査です。免疫に異常があると、受精卵を受け入れられず着床できなくなります。血中にある、白血病のヘルパーT1細胞とヘルパーT2細胞の比率を調べて判断します。

PGT-A

PGT-Aとは、いわゆる着床前診断のひとつで、移植前の胚の染色体異常を調べる検査です。着床率の低い胚や流産率の高い胚を、あらかじめ知ることができます。

着床障害と診断されたら?どんな治療方法がある?

着床障害は、原因によって適切な治療が異なります。
子宮の疾患による着床障害の場合は、まずは病気の治療が優先されます。子宮内環境の改善が必要な場合は、抗菌薬の処方や生活改善などが有効になります。

原因によってさまざまな治療法があるため、検査結果に応じて医師と治療計画を立てることになります。治療と並行して、着床率を少しでも上げるために食事や生活習慣の改善にも取り組んでみましょう。

着床障害に関するよくある質問

Q. なかなか妊娠できず不安です、着床障害でしょうか?

不妊の原因は、必ずしも着床障害とは限りません。身体の状態を正しく把握して、適切な治療を受けることが重要です。不妊は年齢にも起因するため、早めに検査を受けることをおすすめします。

Q. 着床障害かどうか調べるにはどうしたらいいですか?

着床障害かどうかの検査は、不妊治療を専門とする病院やクリニックで受けられます。その後の治療を受けることも考えて、実績の豊富さや通いやすさも考慮してクリニックを選びましょう。

Q. 着床しやすくするためにはどうしたらいいですか?

着床率を上げるには、医療機関で適切な治療を受ける他、生活習慣を見直すことも効果的です。

詳しくはこちらの記事で解説しています。
> 「体外受精の着床率を上げるには?知っておきたいポイントと生活改善策」を読む

妊活や不妊についてお悩みなら六本木レディースクリニックへ

着床障害は子宮内で生じており、その瞬間を確認することは困難なため、原因が特定できないこともある難しい分野です。着床障害を少しでも改善するために、さまざまな検査や治療法を試みる必要があります。
ただし、妊娠ができない原因は必ずしも着床障害だけではありません。身体の状態や年齢などにも起因するため、検査を受けて適切な治療を受けることが大切です。

六本木レディースクリニックは、不妊治療・体外受精を専門とするクリニックです。一般的な不妊検査はもちろん、着床障害に関する検査も取り扱っています。検査をしたうえで、最適な治療計画を患者さまと一緒に考えていきます。妊活や不妊にお悩みの方は、お気軽にカウンセリングにてご相談ください。



仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

ドクターのご紹介

経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務
母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
国立成育医療研究センター不妊診療科
六本木レディースクリニック勤務
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本産科婦人科内視鏡学会

運営者情報

運営クリニック 六本木レディースクリニック
住所 〒106-0032
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院長 小松保則医師