不妊治療にはさまざまな方法がありますが、なかでも「人工授精」と「体外受精」は多くの方が検討する治療法です。どちらも妊娠をサポートする治療ですが、進め方や費用などに大きな違いがあります。
この記事では、人工授精と体外受精の特徴や流れ、メリット・デメリットを詳しく解説し、それぞれの違いについてご紹介します。
目次
不妊治療のステップとは?
不妊治療には、大きく分けて4つのステップがあります。はじめはタイミング法、次に人工授精とステップアップし、そして体外受精、顕微授精と、段階ごとにより高度な治療法に変更しながら妊娠を目指すのが一般的です。
治療法を一定期間試して妊娠に至らなければ、次の治療へステップアップしていくことで、より効率的に妊娠確率を高められます。
人工授精(AIH)とは
人工授精は、やわらかいカテーテルを用いて、直接精子を子宮内に注入する一般不妊治療のひとつです。医師が排卵日を予測し、排卵前に良好な精子のみをカテーテルで注入します。
医師が介入するのは、精子を子宮へ注入するまでであり、その後は自然妊娠と変わりません。麻酔も不要で、痛みや身体に負担が少なく妊娠が目指せます。
人工授精については、こちらのページでも詳しく解説しています。
> 「人工授精(AIH)とは」を読む
人工授精の流れ
人工授精は、次のような流れでおこなわれるのが一般的です。
- 検査や排卵誘発剤の検討(1日目〜5日目)
- 超音波検査の実施(生理10日目〜12日目)
- 人工授精の実施(生理12日目〜14日目)
- 超音波検査の実施(人工授精から2〜3日後)
検査や排卵誘発剤の使用を検討したあと、生理10日目頃にクリニックを受診します。超音波検査で卵胞のサイズなどを確認し、この大きさに基づいて排卵日を予測、人工授精の実施日を決定します。
人工授精の当日はご夫婦でご来院いただき、女性は再度超音波検査を受け、男性は採精室で精子を採取します。なお、男性が来院できない場合などは、自宅で精子を採取して持ち込むことも可能です。
採取した精子を洗浄・濃縮したあと、カテーテルで子宮内に注入し、そのあとご帰宅となります。人工授精から2〜3日後には、排卵が正常に起こったか超音波で検査します。
人工授精が適用になるケース
人工授精は、次のようなケースで適用となります。
- 性交障害(主にEDや射精障害など)
- 男性因子(やや精子が少ない、運動率が不良)
- 精子の侵入障害(子宮頸管の粘液が少ない)
- タイミング法からのステップアップ
人工授精は、主に何らかの原因で性交ができない、精子の状態がやや不良である場合に有効な不妊治療です。一方で女性因子(子宮や卵管の問題)がある場合は、不向きであるといえます。
人工授精のメリット・デメリット
人工授精のメリットは、自然妊娠に近く、身体的・経済的な負担が少ないことが挙げられます。治療にともなう痛みもほとんどありません。調整した精子を子宮に送り込むため、自然妊娠やタイミング法と比較して妊娠率が高いこともメリットです。
一方でデメリットは、自然妊娠より妊娠率は上がるものの、1回あたりの妊娠率は10%程度にとどまる点です。また、適応の範囲が限られており、女性の年齢が高い場合や、不妊原因に女性因子がある場合は、他の不妊治療が有効になります。
人工授精から体外受精へのステップアップ
人工授精を一定期間試して妊娠に至らない場合、体外受精へのステップアップが検討されます。とくに、人工授精の6回目以降の妊娠率は、頭打ちになることが統計的に示されています。3〜5回までに妊娠に至る方が多いとされているため、複数回トライして妊娠しない場合は、早めに体外受精へのステップアップを考えたほうがよい場合があります。
また、身体の状態や年齢によっては、人工授精をスキップして体外受精を検討することもあります。
体外受精(IVF)とは
体外受精は、生殖補助医療に分類される高度な不妊治療のひとつです。女性の体内ではなく、採取した卵子と精子を体外で受精させ、受精卵(胚)を育てます。一定の期間培養したあと、最も発育のよい胚を子宮内に移植し、着床を促して妊娠を試みます。
体外受精は、卵管・子宮に問題がある女性不妊や、重度の男性不妊などに有効です。卵巣刺激や採卵などによる身体への負担はありますが、比較的高い妊娠率が期待できます。
体外受精については、こちらのページでも詳しく解説しています。
> 「体外受精(IVF)とは」を読む
体外受精の流れ
体外受精は、次のような流れでおこなわれるのが一般的です。
- 検査・卵巣刺激(卵胞を育てる)
- 採卵(卵子を採取する)
- 受精(精子と卵子をかけ合わせる)
- 胚培養(受精卵を育てる)
- 胚移植(受精卵を子宮に戻す)
- ホルモン補充
- 妊娠判定
まず、体外受精やスケジュールについて医師から説明を受けたあと、月経周期に合わせて薬剤を使用し、卵巣を刺激して卵胞を育てます。超音波検査で卵胞の育ち具合を確認しながら、採卵の日時を決定します。
採卵当日は、夫婦でご来院いただき、男性は採精室で精子を採取します。女性の採卵では、専用の針で卵巣を刺し、卵胞液とともに卵子を採取します。その後、精子と卵子を受精させ、受精卵(胚)を培養します。
採卵と同じ周期、または別の周期で胚移植をおこないます。培養して育った良好な胚を子宮内に戻し、着床を促します。着床率を高めるホルモン補充をし、胚移植からおよそ10日後に妊娠判定をおこなう流れです。
体外受精が適用になるケース
体外受精は、次のようなケースで適用となります。
体外受精は、卵管・子宮・免疫に問題があり、自然妊娠が望めない場合や、重度の男性不妊に適用となります。また、原因が特定できない場合、女性の年齢が高い場合なども有効です。
体外受精のメリット・デメリット
体外受精のメリットは、妊娠率が一般不妊治療よりも高いことです。婦人科系の疾患をお持ちで、卵管の癒着や閉塞がある場合でも、体外で受精させることで妊娠が可能になります。年齢や原因不明不妊で自然妊娠が難しい場合にも有効な治療法で、適応範囲が広いといえます。
一方でデメリットは、排卵誘発剤や採卵などによる身体の負担や経済的な負担が大きいことです。
通院回数も多いため、仕事と治療の両立には周囲からの理解と協力が必要になります。また、身体の状態や年齢によっては、必ずしも妊娠できるとは限りません。治療を繰り返すことで、経済的な負担も大きくなるといえます。
人工授精と体外受精の違い
人工授精と体外受精は、同じ不妊治療でも治療内容が明確に異なります。
とくに体外受精は、採卵・培養・胚移植などの高度な技術がともなう生殖補助医療であり、これが人工授精との大きな違いです。そのため、通院回数や費用にも大きな差があります。
人工授精 | 体外受精 | |
---|---|---|
特徴 | 選別された良好な精子を子宮に注入する、自然妊娠に近い不妊治療 | 体外で受精させた受精卵(胚)を子宮に戻して妊娠を試みる高度な不妊治療 |
適用範囲 | ・性交障害 ・軽度の男性因子 ・精子の侵入障害 |
・卵管や子宮因子 ・免疫性因子 ・重度の男性因子 ・原因不明不妊 |
通院回数 | 2〜3回程度 | 6〜8回程度 |
リスク | ・まれに感染リスク | ・卵巣過剰刺激症候群のリスク ・採卵時の出血や損傷 |
費用 | 5,460円(保険診療) | 9〜18万円程度(保険診療)※卵子の個数などにより変動 |
1回あたりの妊娠率 | 10%程度 | 40%程度 |
メリット | ・自然妊娠に近い ・身体と経済的負担が少ない |
・妊娠率が高い ・適用範囲が広い |
デメリット | ・妊娠率はやや低い | ・身体と経済的負担が大きい ・副作用がある |
自分に合った治療に取り組むことが重要
人工授精と体外受精は、治療内容やプロセスが明確に異なる不妊治療で、それぞれメリットやデメリットがあります。どちらがよいか、一概に優劣をつけることはできません。大切なのは、検査をしたうえでご自身に合った治療に取り組むことです。
不妊の原因・年齢・身体の状態に応じて、適切な不妊治療は一人ひとり異なります。自分に合った治療を見つけるためにも、信頼できる不妊の専門クリニックへまずは相談してみましょう。
体外受精についてお悩みなら六本木レディースクリニックへ
「なかなか赤ちゃんを授かれない」とお悩みの方は、人工授精や体外受精などの不妊治療を検討するのもひとつの選択肢です。どの治療が自分に合っているのか、まずはカウンセリングや検査を受けてみることをおすすめします。
六本木レディースクリニックは、不妊治療を専門とするクリニックです。当院では、精神的・身体的・経済的の多方面を考慮した「オーダーメイド治療」を実施しており、一人ひとりに合った治療をご提案いたします。不妊にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。