双子や三つ子の妊娠は大変喜ばしいことです。しかし一方で、妊娠や出産のリスクや産後育児の身体的・経済的負担が大きいことが懸念点といえるでしょう。
この記事では双子を授かる人の特徴や不妊治療・体外受精との関連性、妊娠率とともに、リスクや活用できる支援制度などをご紹介します。
目次
双胎・多胎妊娠とは?
双胎・多胎妊娠とは、いわゆる双子や三つ子などの妊娠のことを指します。双胎妊娠は子宮内に2人の赤ちゃんを妊娠した状態のことで、多胎妊娠は2人以上を妊娠した状態のことです。
一方で子宮に1人の赤ちゃんを妊娠した状態は単胎妊娠といわれます。
双子となる双胎妊娠の場合は「一卵性双胎」と「二卵性双胎」に分けられ、それぞれ特徴が異なります。
一卵性双胎と二卵性双胎
一卵性双胎とはひとつの卵子に精子が受精し、その後受精卵が2つに分裂・成長して双子が誕生することです。このように生まれた双子は、遺伝子情報がほとんど同じであり、容姿がそっくりで血液型や性別も同じであることが特徴です。このような双子を一卵性双生児といいます。
一方で二卵性双胎は、2つの卵子に異なる2つの精子が受精し、2つの受精卵がそれぞれ成長して双子が誕生する場合のことです。
遺伝子情報が異なるため、容姿・性別・血液型の違いがあるのが特徴です。この場合は二卵性双生児といいます。
双子の妊娠はいつわかる?
双子の妊娠は、妊娠検査薬等では判明しません。医療機関で検査することで確認できます。一卵性双胎と二卵性双胎で、確認できるタイミングは以下のように異なります。
- 一卵性双胎:妊娠6週目ごろを目安に胎児の心拍で判明
- 二卵性双胎:妊娠5週目ごろを目安に超音波検査で判明
妊娠初期に、子宮にある胎嚢(たいのう)という胎児を包む袋が超音波検査で確認できます。二卵性双胎はこれが2つあるため判別しやすく、比較的早く確認できるといえます。
一卵性双胎は、胎嚢がひとつであるため胎児の心拍がわかる妊娠6週目あたりで確認が可能です。
多胎妊娠の確率
日本における分娩件数全体に占める多胎の割合は、最も多かった2005年の1.18%をピークに、その後は1%前後となっています。
また多胎となる確率は女性の年齢によっても異なり、高齢になるにつれて割合が増す傾向です。20代では1.31%〜1.7%であるのに対し、30代からは2%を超え、45歳以上では5.95%まで達するといいます。
参考:厚生労働省「多胎児支援のポイント」
多胎妊娠はなぜ起きる?
そもそも多胎妊娠はなぜ起こるのでしょうか。一卵性と二卵性(複数卵生)とで、異なるメカニズムや原因をそれぞれ解説します。
一卵性の多胎になる原因
一卵性は、ひとつの受精卵が何らかの原因で分裂して、双胎または多胎となります。
考えられる原因としては、ホルモンバランスの乱れ・高齢による卵子の質の低下・若すぎる妊娠・激しい運動での衝撃などがあるといわれています。
二卵性・複数卵性の多胎になる原因
二卵性または複数卵生は、2つの異なる受精卵が成長して多胎となります。もともと異なる卵子と精子であるため遺伝子情報が異なり、生まれた双子は容姿が違います。
原因は、不妊治療で使われる排卵誘発剤の影響により排卵数が増えることなどがあげられます。使用する薬剤によっても、多胎になる可能性は違ってきます。
また体外受精や顕微授精では、年齢や状況によって2つの胚移植をおこなうケースがあることも、一因として考えられます。
双子・三つ子を授かる人の特徴・傾向は?
双子や三つ子の妊娠は、基本的には偶然によるものとされています。しかし双子のなかでも二卵性双胎の場合は、遺伝による排卵機能や人種が関係しているという考えもあるようです。
なりやすさの傾向や割合の観点でいうと、年齢が高いほど多胎妊娠率は増える傾向にあります。
不妊治療や体外受精は多胎妊娠になりやすい?
不妊治療や体外受精で、多胎妊娠になる確率が上がるといわれています。
体外受精で移植する胚は、原則ひとつと定められています。ただし女性の年齢が35歳以上、または体外受精で2回以上連続して妊娠に至らなかった場合は、2つの胚を移植することを許容するとしています。
こういったケースでは、双子を授かる可能性が上がるといえます。
とはいえ原則は移植できる胚はひとつであり、場合によっては2つまで戻すこともありますが、3つ以上戻すことはありません。したがって、三つ子になる可能性は低いといえるでしょう。
また体外受精の刺激法や排卵誘発剤で、多胎になる可能性が上がるという意見もあります。なかでも排卵誘発剤を使うと、双子・三つ子になる割合が増すといいます。
卵子凍結は多胎妊娠になりやすい?
卵子凍結は卵子を卵巣から採取し、凍結保存する生殖補助医療です。
結論からいうと卵子凍結によって、多胎妊娠しやすくなるわけではありません。しかし現代においては、今すぐ妊娠を望まない女性が質の高い卵子を保存しておくことで、将来の妊娠率を高められる手段として利用されています。
いつか子どもを授かりたいと考えていても、いわゆる妊娠適齢期と妊娠を考えられるタイミングが一致するとは限りません。その一方で卵子の老化は加齢と共に少しずつ進み、35歳を境に急速に進むといわれています。
卵子凍結を選択肢に入れれば、今は妊娠できるタイミングではなかったとしても、将来子どもを産める希望を持つことができるのです。
多胎妊娠はリスクが高い?
多胎妊娠は複数の赤ちゃんを授かることができる一方で、妊娠・出産にともなうリスクがあります。不妊治療に関わる医師が多胎妊娠に慎重な姿勢を見せるのは、多胎妊娠が母体に及ぼすリスクを軽視できないためです。
母体・胎児ともに考えられるリスクは、次のようなものがあります。
妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群は、母体に血管障害や臓器障害が起こりやすくなり、その結果胎児に悪影響を及ぼしてしまう病気です。妊娠中に高血圧になる、もしくは高血圧と蛋白尿の両方の症状がみられます。
前置胎盤
前置胎盤とは、胎盤の位置が通常よりも低く、子宮口の一部または全部を塞いでしまっている状態のことをいいます。
本来なら胎児を出産したあとに胎盤が出てきますが、前置胎盤の場合は胎盤から先に出てくることになります。大量に出血する恐れがあるため、ほとんどのケースで帝王切開が適応となります。
早産・発育不全
多胎妊娠の場合は1人を妊娠した時よりも子宮が大きくなりやすく、切迫早産になりやすいともいわれています。
そのため未熟児で生まれる可能性が高くなります。分娩の際には微弱陣痛で出産がスムーズにいかなかったり、分娩後に弛緩出血が起きたりと、難産になるケースも少なくありません。
在胎週数37週に満たないまま出産すると早産になり、赤ちゃんの成長が十分でないため、保育器でのケアを要する場合があります。
その他のリスク
その他のリスクとして「バニシングツイン」と呼ばれる現象があります。
バニシングツインとは、双子のうち片方の胎児が亡くなってしまい、子宮に吸収されて消えてしまう現象のことです。
原因は今のところ解明されていません。妊娠初期の双胎妊娠にみられる現象で、10〜15%程度の確率で生じるといわれています。
双子を授かったら?出産・子育てをサポートする制度について
双子を授かることは嬉しい反面、出産による身体的・精神的負担が大きいといえます。さらに産後数カ月は授乳や夜泣きへの対応が必要になり、より一層の支援が必要になるといえます。
パートナーや家族からの協力や理解を得るのに加えて、次のような制度を活用してみましょう。
産前産後休業
企業に勤める方は、正社員やパートなどの雇用形態に関わらず産前産後休業を取得できます。
単胎妊娠の場合は、出産予定日を含む6週間以内の取得になりますが、多胎妊娠の場合は14週間以内で取得可能です。さらに産後42日間は休業することが義務付けられています。
産休は休業申請が必要になります。多胎妊娠は早産になるリスクも高いため、早めに産休を取得し、出産に備えることをおすすめします。
出産育児一時金
出産すると、出産育児一時金が受けられます。
2023年4月1日より、支給額が1子につき42万円から50万円に引き上げられました。したがって、双子の場合は100万円の出産育児一時金が受け取れることになります。
直接病院へ出産費用が充てられる、直接支払制度を利用すると支払いもスムーズにできます。
高額療養費制度
高額療養費制度は病院で支払った月の金額が、ある一定額を超えた場合に超過した金額が支給される制度です。特に双子の場合、切迫早産や帝王切開などのリスクが考えられ、医療費が通常よりもかかることが想定されます。
この制度を利用すれば予想以上に医療費がかかってしまった場合も、その分を補助してもらえるため、自己負担額を軽減できます。
なお、月の上限額は年齢と所得によって異なるため、事前に確認して申請しましょう。
妊娠・出産のお悩みは六本木レディースクリニックにご相談ください
双子や三つ子になる確率は、分娩件数全体に占める多胎の割合からみると1%程度です。また不妊治療や体外受精をおこなうと、双子を授かる確率は増す傾向にあります。
六本木レディースクリニックは、体外受精や卵子凍結などをおこなう不妊専門クリニックです。患者さま一人ひとりに合わせた、無理のない治療計画をご提案しています。妊娠・出産でお悩みの方は、お気軽に当院にご相談ください。