体外受精を検討している方にとって、特に気になるのが費用についてです。実際どのくらいかかるのか気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、体外受精の費用について診療内容ごとにご紹介します。また、費用負担を軽くする方法がないかについても解説します。
目次
体外受精の平均費用は?
体外受精は「高度生殖補助医療」に分類されます。採卵や胚移植をともなう高度な医療技術を要するため、一般不妊治療(人工授精など)と比べると高額になる傾向にあります。
体外受精にかかる平均費用は、1回30〜50万円程度といわれています。
ただしこれは保険適用前の自費診療の場合です。また、費用に幅が見られるのは、採取する卵子や凍結する受精卵の個数によって金額が変動するためです。
2022年に体外受精も保険適用に
2022年4月より、体外受精が保険適用となりました。これにより現在は保険診療として治療を受けられ、窓口で支払う費用は3割負担となっています。
負担が軽減されたことで、多くの方が体外受精を検討しやすくなりました。費用は個人差があり一概にいえませんが、1回の費用を20万円以下に抑えられる場合もあるでしょう。
ただし、保険適用には以下の条件があるため確認が必要です。
- 年齢要件:女性の年齢が43歳未満
- 回数制限:1子につき通算6回または3回(年齢により異なる)
詳しくはこちらの記事でも解説しています。
> 「不妊治療はいくらかかる?費用や保険適用の条件について解説」を読む
実際の費用は診療内容による
先述の通り、体外受精は人によって診療内容が異なるため金額が変動します。平均費用は目安にはなりますが、個人差があることを覚えておきましょう。
また、自費の体外受精はクリニックや医療機関によって定めている金額設定が違います。どのくらい費用がかかりそうか、事前に確認しておきましょう。
体外受精の具体的な金額と診療内容
ここでは体外受精の診療内容ごとに、自費診療と保険診療の費用をご紹介します。主な診療内容は以下のとおりです。
- 初診・検査費用
- 卵巣刺激
- 採卵
- 受精
- 培養
- 胚凍結
- ホルモン補充
- 胚移植
※金額はクリニックや診療内容によって異なるため、一例としてご参考ください。
初診・検査費用
検査項目によって保険診療と自費診療があります。混合診療は原則できません。
自費診療で実施する場合は、下記が初診料を含めた検査費用です。
診療内容 | 自費診療費 | |
---|---|---|
初診セット料金(女性) | 初診料+感染症検査+各種検査 | 36,060円 |
初診セット料金(男性) | 初診料+精液検査+感染症検査 | 14,230円 |
※上記内容以外の処置を受けた場合は追加で費用がかかります。
採卵にかかる費用
より多くの卵子を採取するため、多くの場合、排卵誘発剤の注射をおこないます。排卵誘発剤にかかる費用は、患者さまによって異なります。
また自宅で自己注射をおこなう場合は、薬剤代の他にも注射指導料が必要になることもあります。
採卵にかかる費用は下記のとおりです。
自費診療 | 保険診療 |
---|---|
77,000円 ※採卵できなかった場合は手技料として33,000円 |
採卵術 9,600円 |
1個 +7,200円 | |
2~5個+10,800円 | |
6~9個+16,500円 | |
10個以上 +21,600円 |
いずれも麻酔を使用した場合は別途費用がかかります。また保険診療の場合、採れた卵子の個数に応じて費用が変動します。
※上記内容以外にホルモン補充や卵巣刺激に関する費用が追加でかかります。
受精にかかる費用
体外受精の場合、採卵した卵子に精子をふりかけて受精させます。
顕微授精の場合、顕微鏡下で採卵した卵子にひとつの精子を直接注入して受精させます。
受精にかかる費用は、それぞれ下記のとおりです。
自費診療 | 保険診療(3割) | |
---|---|---|
体外受精 | 22,000円 | 12,600円 |
顕微授精 | 1個 11000円 (顕微受精基本手技料金11,000円) |
1個 11,400円 |
2〜5個 17,400円 | ||
6〜9個 27,000円 | ||
10個以上 35,400円 |
受精を確認したあと、子宮に戻せる状態にするために受精卵(胚)を培養します。
培養にかかる費用
着床しやすい受精卵(胚)まで育てることを培養といいます。保険診療の場合、培養する受精卵の個数に応じて費用が変動します。
2〜3日間培養した胚を「初期胚」、5〜6日間培養した胚を「胚盤胞」と呼び、胚盤胞まで育てる場合は、個数に応じて費用が加算されます。
培養にかかる費用は下記のとおりです。
自費診療 | 保険診療(3割) | |
---|---|---|
110,000円 ※凍結に至らなかった場合は 手技料として55,000円 |
1個 13,500円 | |
2〜5個 18,000円 | ||
6〜9個 25,200円 | ||
10個以上 31,500円 | ||
胚盤胞加算 | 1個 +4,500円 | |
2〜5個 +6,000円 | ||
6〜9個 +7,500円 | ||
10個以上 +9,000円 |
胚凍結にかかる費用
受精卵(胚)を培養したあと、採卵と同じ周期では移植せず、一度凍結保存する場合があります。子宮内膜が良好なタイミングをみて移植が可能になり、妊娠率の向上が期待できるからです。また、複数の移植可能な胚が得られた場合、次回周期以降のために保存しておくことで、採卵の負担を軽減できます。
胚凍結にかかる費用は下記のとおりです。
自費診療 | 保険診療(3割) |
---|---|
11,000円(凍結数1本) (胚凍結基本手技料11,000円) |
1個 15,000円 |
2〜5個 21,000円 | |
6〜9個 30,600円 | |
10個以上 39,000円 |
胚移植にかかる費用
胚移植には大きく分けて新鮮胚移植と凍結融解胚移植があり、それぞれ費用が異なります。
新鮮胚移植は、凍結保存せずに採卵を実施した周期に子宮内に移植する方法です。凍結融解胚移植は、胚をいったん凍結保存し、次周期以降に融解して移植します。
胚移植にかかる費用は下記のとおりです。
自費診療 | 保険診療 |
---|---|
121,000円 ※凍結・融解胚移植の場合、 融解手技料として+22,000円 |
新鮮胚移植:22,500円 |
凍結・融解胚移植:36,000円 |
胚移植の際の検査や投薬料など、別途かかる場合があります。
クリニック選びで確認しておきたいポイント
クリニック選びの際は金額だけでなく、次のようなポイントも確認しておきましょう。
費用や治療についてちゃんと説明してくれるか
体外受精と一言にいっても、治療のプロセスのなかにはさまざまな手技手法があります。治療や費用について、しっかり説明してくれるクリニックを選びましょう。
説明なしにさまざまな検査やオプションが追加されると、知らない間に平均費用よりも高額になる場合も考えられます。妊娠するために必要な治療だとしても、やはり金銭的な負担は無視できません。
費用や治療の説明を聞き、納得したうえで治療が受けられるクリニックを選んでみてください。
自分に合った治療法を提案してくれるか
不妊治療で妊娠を目指すには、一人一人に合った治療法を受けることが重要となります。
不妊の原因や年齢はもちろん、精神的・身体的・経済的な面を考慮した治療を提案してくれるかどうかもポイントです。ご自身に合った治療法を受けるにあたって、どのくらい費用がかかるのか明示してくれるクリニックがよいでしょう。
体外受精の費用負担を軽くするには?
体外受精が保険適用となったとはいえ、金銭的な負担があるのは変わりません。不妊治療は長期に及ぶことも多く、その分負担も大きくなります。
ここでは、体外受精の費用負担を軽くするためにできることをご紹介します。
医療費控除を利用する
医療費控除とは、1年間に支払った世帯の医療費を申告することで所得控除が受けられる制度のことです。ご自身や配偶者、または親族のために支払った医療費の合計が10万円以上となる場合に申告ができます。体外受精や不妊検査の費用も対象です。
納付した所得税の一部を還付金として受け取ることができ、費用負担を軽減できます。
医療費控除の詳細はこちらの記事でも解説しています。
> 「不妊治療は医療費控除の対象?申告方法や負担を減らす方法を解説」を読む
高額療養費制度を利用する
高額療養費制度は、高額な医療費を支払った場合に、年齢や所得状況によって払い戻しが受けられる制度です。もともと体外受精は対象外でしたが、保険適用となったことで、当該制度が利用できるようになりました。
高額療養費制度は、加入している公的医療保険に支払申請書を提出することで支給され、自己負担額を下げることができます。
また事前に「限度額適用認定証申請」をすることで、窓口での支払いを限度額までとどめることも可能です。受診するクリニックで相談してみましょう。
職場の福利厚生や制度を利用する
近年では、仕事と不妊治療を継続できる環境の整備に取り組んでいる企業もいくつかあります。また企業によっては、治療費の補助金制度や貸付制度などを設けている事例もあります。
ご自身の職場の福利厚生や制度を、今一度確認してみることをおすすめします。また仕事を続けながら不妊治療を継続するために、フレックスやテレワーク、時短勤務などの制度が利用できるか相談してみるのもよいでしょう。
民間の医療保険を活用する
体外受精を含む不妊治療が保険適用となったことで、民間の医療保険で給付金を申請できる場合があります。ご自身が加入している医療保険の保障内容を確認してみましょう。
また治療後に領収書や診断書などを提出することで、手術給付金を受け取れる可能性があります。「先進医療特約」が付いている医療保険は、自費診療の不妊治療も給付金の対象になる場合があります。
体外受精についてお悩みなら六本木レディースクリニックへ
体外受精が保険適用となったことで、多くの方が治療を検討しやすくなりました。また医療控除や高額療養費制度などを利用することで、さらに費用負担を軽減できます。
六本木レディースクリニックは、不妊治療・体外受精専門のクリニックです。一人一人のお仕事やご家庭の事情をお伺いし、経済的な面も考慮して、無理なく治療が継続できる「オーダーメイド治療」を一緒に考えていきます。体外受精をご検討中の方は、ぜひ当院にご相談ください。