体外受精後に妊娠検査薬を使うか否かは個人の自由です


体外受精において、胚移植を行い着床が上手くいくと妊娠が成立します。
病院では妊娠の有無を調べる妊娠判定日を設けていますが、その前に自分で妊娠しているかを市販の妊娠検査薬で調べることもできるでしょう。

しかし妊娠検査薬を使用するタイミングが早すぎた場合や、体外受精の治療においてhCG注射を受けている場合などは、正確な結果が出ないこともあるので注意が必要です。
妊娠検査薬に頼りすぎないで、きちんと病院で検査を受けることが大事です。

妊娠検査薬は病院の妊娠検査よりも尿中のホルモン検出数値が低くなっています

体外受精において、受精卵を子宮内に戻す胚移植が行われます。
その後、受精卵が子宮に絨毛という根を張って着床すれば、妊娠成立となるのです。

一般的には、胚移植から約2週間~20日後に妊娠判定日を設定し、病院を受診して妊娠検査を受けることになります。

ただその前に妊娠しているか気になり、市販の妊娠検査薬を使用したいという方も多いでしょう。
基本的に妊娠判定日前に、市販の妊娠検査薬を使用することは問題ありません。
受精卵が着床して妊娠が成立すると、hCG(ヒト絨毛ゴナドトロピン)というホルモン量が増えてきます。

そのため市販の妊娠検査薬は、尿に含まれるhCGというホルモンの量を測定して妊娠の有無の判定がなされます。
病院では尿検査もしくは、血液検査が行われますが、hCG濃度を測定するという方法は検査薬と同じです。

ただ市販の妊娠検査薬は尿中のhCG値が50mIU/ml、病院での妊娠検査では、100mIU/mlと検出数値が妊娠検査薬の方が下回るとされています。

妊娠が成立してhCG量が増えていれば、妊娠検査薬を使用することで妊娠の可能性がいち早く分かるというメリットはあるでしょう。
しかしそのためにもこの検出数値の違いについては、予め把握しておくべきだと言えます。

hCG注射を行った場合は、妊娠検査薬を使う時期に気を付ける必要があります


妊娠すると分泌量が増えるとされるhCGには、子宮内膜を分厚くするプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンの分泌を促したり、黄体形成ホルモンという排卵を促したりするホルモンと同様の作用があるとされています。

そのため、体外受精の治療で排卵誘発剤として、また胚移植後に子宮内膜を分厚くして着床しやすくするために、hCG注射を行う場合があります。
hCG注射を行うと、体内のhCG量が既に増加しているので、その状態で市販の妊娠検査薬を使用すると、陽性が出る可能性が高まります。

つまり妊娠検査薬の陽性反応は注射によるものか、妊娠によるものかを正確に判断することができないのです。
hCG注射を受けている間は、体内のhCG量がどんどん増加していくので妊娠検査薬を使っても意味がないので控えたほうがよいと言えます。

ではhCG注射が終わったら、妊娠検査薬は使えるのでは?と思われる方もいるでしょう。
ただいつまで注射により血中のhCG濃度が高い状態が続くのかは、注射の種類や頻度、回数そして個人の体質などによって異なるので一概には言えません。

一般的には注射後約1~2週間は空けるべきだとされていますが、妊娠検査薬を使いたいなら、使用時期について医師に確認することをおすすめします。

妊娠検査薬のみで判断せず、病院での検査が必要です

胚移植後は、上手くいけば3~5日後に受精卵は着床するとされています。
また体外で受精卵を培養して胚分割を進め、胚盤胞にまで成長させてから移植した場合は、1日程で着床すると言われています。

胚移植から10日後位で、倦怠感や下腹部痛などの妊娠超初期症状を感じる方もいるでしょう。
そうなると、すぐにでも妊娠検査薬を使いたくなるものです。

ただ体内のhCG量の分泌スピードには個人差があり、着床が上手くいってもhCG分泌量がなかなか増えない場合もあります。
妊娠検査薬を使うタイミングによっては、妊娠していても陰性の結果が出てしまう可能性もあるのです。

また妊娠検査薬でうっすら陽性の結果が出ても、使用のタイミングが早すぎると、hCG量が増えているのかもはっきりわからず、結局妊娠判定日までに化学流産してしまうという可能性もゼロではありません。

妊娠検査薬での妊娠チェックは、完全なものではなく、あくまでも妊娠しているか否かの一つの目安だと考えたほうがよいでしょう。
妊娠検査薬使用の結果を過信しないで、必ず妊娠判定日には病院できちんと検査を受けて下さい。

(まとめ)体外受精後に妊娠検査薬を使ってもいいの?

1.体外受精後に妊娠検査薬を使うか否かは個人の自由です

体外受精後、妊娠判定日前に市販の妊娠検査薬を使用することは可能です。

ただ使用のタイミングによっては正確な結果が出ないこともあるので、結果を過信しすぎないようにしましょう。

2.妊娠検査薬は病院の妊娠検査よりも尿中のホルモン検出数値が低くなっています

病院で行う妊娠検査も、市販の妊娠検査薬も妊娠が成立すると分泌量が増えるhCGというホルモン量を測定することで、妊娠の有無を調べます。

ただhCGの検出数値は妊娠検査薬の方が低く設定されています。

3.hCG注射を行った場合は、妊娠検査薬を使う時期に気を付ける必要があります

体外受精では妊娠を継続させるためなどの目的で、胚移植後もhCG注射が行われるケースがあります。

この場合、妊娠検査薬を使うタイミングが早すぎると、正確な結果が出ないので注意が必要です。

4.妊娠検査薬のみで判断せず、病院での検査が必要です

受精卵が上手く着床し、妊娠が成立してもhCGの分泌速度には個人差があると言われています。

そのため、妊娠検査薬では正しい結果が出ない場合もあるので、過信しないで病院できちんと検査を受けることが大事です。



仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

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経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務
母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
国立成育医療研究センター不妊診療科
六本木レディースクリニック勤務
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本産科婦人科内視鏡学会

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院長 小松保則医師