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体外受精でも癒着胎盤が起こるリスクもゼロとは言えないとされています
通常子宮の上部に貼りつく形で形成される胎盤は、母体と胎児をつなぐ生命線でもあり、胎盤を通じて栄養分などが届けられます。
胎盤は分娩後に自然排出されますが、胎盤の組織が子宮に癒着して、剥がれない状態が癒着胎盤とされています。
体外受精に至る不妊要因の中には、子宮筋腫など癒着胎盤を引き起こす要素となるケースも考えられます。
そのため、体外受精を行うことで胎盤癒着が起こるリスクはゼロとは言えないとされています。
不妊の原因が癒着胎盤を招く要素と関係していれば、体外受精で起こる可能性もあるとされています
体外受精に至る不妊の原因としては、子宮筋腫や子宮頚部の炎症、子宮頸管のトラブルや、卵巣機能の低下による排卵障害などが挙げられます。
一方で、癒着胎盤は子宮奇形や帝王切開、筋腫の摘出手術などによる子宮や子宮内膜の傷、子宮筋腫の一種粘膜下筋腫、先天的な子宮内膜形成不全などが主な要因とされています。
子宮奇形は様々なタイプに分けられますが、子宮が従来の形を成していない変形、もしくは欠けた状態のことで、不妊や流産の原因とも言われています。
さらに、粘膜下筋腫は子宮の内側に向かってできる筋腫であり、少量の出血が続くなどの症状が見られ、受精卵が着床しづらくなるとされています。
また生まれつき子宮内膜が薄いなど形成が不十分な状態だと、胎盤が子宮組織の奥深く、筋肉層にまで侵入してしまうため癒着が起こりやすくなるのです。
このように不妊の原因が癒着胎盤を引き起こす要因となっているケースがあります。
そのため、体外受精により妊娠が成立しても、癒着胎盤が起こるリスクはあると言えるでしょう。
体外受精による妊娠で前置胎盤になると癒着胎盤が起こる可能性が高まるとされています
体外受精により妊娠が成立した後、前置胎盤という胎盤のトラブルが起こると、癒着胎盤を招くリスクが高まると言われています。
胎盤は通常より子宮の上部に貼りつきますが、前置胎盤ではもっと低い位置にできており、子宮の出口を塞いでしまっている状態のことです。
前置胎盤といっても、子宮の一部を塞いでいる、全部を塞いでいる場合など3種類に分けられます。
前置胎盤になると、5~10%の確率で癒着胎盤になると言われています。
前置胎盤の原因としては、喫煙や多産婦や帝王切開の既往・多胎妊娠・子宮の既往症などが挙げられます。
そして自然妊娠に比べても、体外受精は前置胎盤の発生リスクが高くなるとも言われています。
それは前置胎盤の原因が子宮の既往症や多胎妊娠など、不妊の原因や体外受精で起こりうるリスクと大きく関係しているからだと言えるでしょう。
前置胎盤と診断されても、残念ながら薬などで治療することができないので、そのままの状態で出産を迎えることになります。
しかし前置胎盤は妊婦検診の超音波検査などで早い段階から見つけることができます。
無事に出産できるように出産時の出血を見越して、貧血予防のために鉄剤を投与するなど処置や、自宅安静にして経過観察を行うなど、リスクに備えて事前の準備が可能となります。
癒着胎盤の疑いがある場合でも、適切に処置すれば無事出産できるケースが多いとされています
癒着胎盤は、超音波検査などでもはっきりわからず、残念ながら事前に確たる診断を受けることはできないので、分娩後初めて分かるというケースもあります。
しかし前置胎盤や粘膜下筋腫など癒着胎盤の可能性が高い場合は、安全のために帝王切開での出産とするなど、リスクをできるだけ下げる準備がなされます。
通常は赤ちゃん晩出後、しばらくすると胎盤が自然にはがれて排出されますが、癒着胎盤だと待っても排出されません。
ムリに剥がそうとするとそこから大量に出血して、母体の命に関わる場合もあるので危険です。
そのため、出血が少量の場合は点滴で投薬を行い、自然に剥がれるのを待つことや、後日摘出の処置を行うことになります。
さらに場合によっては、医師が子宮内に手を入れて剥がす処置を行うこともあります。
ただし大量に出血しており、癒着が酷くて止血が難しい場合は、母体の命を優先するために子宮を摘出する場合もごくまれにあるとされています。
しかしほとんどの場合は、適切に処置が行われれば無事に出産を終えることができるとされていますので、安心してください。
(まとめ)体外受精では癒着胎盤になるリスクは高いの?
子宮上部に形成された胎児と母体をつなぐ胎盤が、分娩後自然に剥がれない状態を癒着胎盤と言います。
体外受精において、癒着胎盤を起こす不妊要因が見つかれば、発生リスクはあるとされています。
不妊の原因は子宮筋腫や卵巣機能の低下などが挙げられます。
癒着胎盤も子宮や卵巣のトラブルが要因の一つとされているため、体外受精においても発生リスクはあると言われています。
通常子宮上部にある胎盤が子宮口を塞ぐ形で下にできる前置胎盤になると、胎盤が癒着するリスクが高まるとされています。
また体外受精は前置胎盤を引き起こす可能性もあるとされています。
体外受精後の分娩時に癒着胎盤が起きた場合は、ムリに剥がさないで経過観察を行うなど、出血量などによって処置が異なります。
ただしきちんと処置を行えば母体へのリスクを抑えることができるとされています。