体外受精は、採卵や胚移植などの高度な医療技術がともなう不妊治療です。なかでも「採卵」は重要なプロセスで、その後の妊娠成功率を左右すると言っても過言ではありません。

この記事では、知っておきたい採卵の基礎知識や採卵できる平均個数について解説します。

採卵とは?

採卵とは?MV
体外受精は、排卵する前に女性の卵巣から卵子を取り出し、体外で精子と受精させる不妊治療です。その際、卵子を取り出すことを「採卵」といいます。

採卵時は卵巣内の卵子の状態を確認し、なるべく十分に成熟した卵子を選びます。専用の細長い採卵針を用いて膣から卵巣へ向かって針を挿し、卵胞液ごと卵子を採卵します。その後、精子と受精させ、女性の子宮内に移植します。

採卵の仕組みと種類

採卵する際は、大きく分けて「排卵誘発剤を使用して採卵する方法」と「自然排卵周期で採卵する方法」があります。
自然排卵周期で採卵する場合は、誘発剤による身体への負担が少ない一方で、採取できる卵子がひとつに限られてしまうデメリットがあります。そのため、より多くの卵子を採取できる排卵誘発剤を使用するケースが多い傾向にあります。

排卵誘発剤を使用して採卵する場合、主に次のような方法があります。

クロミフェン法

クロミフェン法は、卵胞を育てて排卵を促す薬剤「クロミッド」を月経後に服用して採卵する方法です。使用するのはほぼ内服薬のみで、卵巣への刺激が少ないのが特徴です。しかし薬剤の刺激が少なく、連続周期採卵もできますが、内膜発育不全を起こすリスクもあります。
自然排卵できても卵胞の成長が弱く、卵巣の機能が低下している方に適しています。より刺激を強めるのであれば、クロミッドと合わせてhMG・rFSH注射を併用することも可能です。

ロング法(アゴニスト法)

ロング法とは、GnRHアゴニストと呼ばれる点鼻薬を用いるアゴニスト法の一種で、卵胞を育てるために長期間かけて投薬します。月経前周期の高温期中期から点鼻薬を投与します。排卵を抑えつつ、生理3日目からhMG・rFSH注射で卵巣を刺激し、卵子を育てていく方法です。
刺激が強く身体への負担が大きいのがデメリットですが、採卵できる卵子の数が多いのがメリットです。

ショート法(アゴニスト法)

ショート法もアゴニスト法の一種であり、ロング法と比べて投薬期間が短いことが特徴です。GnRHアゴニスト点鼻薬は、月経が始まってから投与することになります。
hMG・rFSH注射を使用する点はロング法と同様ですが、投与期間が短いメリットがあります。

アンタゴニスト法

アンタゴニスト法は、採卵のタイミングに合わせ、成長を促す採卵法です。
卵子を育てるためのGnRHアゴニスト点鼻薬を長期投与せず、卵胞がある程度育った段階で、GnRHアンタゴニスト注射を用いて排卵を調整します。
費用はやや高額になりますが、排卵コントロールがしやすく、排卵誘発剤の使用量が少ないので身体への負担が軽いのがメリットです。

採卵の手順と流れ

ここからは採卵の手順や流れを解説します。

Step1.卵巣を刺激する

まずは質の高い卵子をより多く育てるため、卵巣刺激をおこないます。卵巣刺激法は、前述のとおりさまざまな方法があります。年齢や卵巣機能の状態などを考慮し、一人ひとりの身体に合った方法が選択されます。

採卵に向けて卵胞を成熟させ、超音波検査で卵胞の成長具合を確認しながら、最適な採卵日を決定します。

Step2.排卵日に卵子を取り出す(採卵)

超音波で卵巣の様子を確認しながら、専用の針を用いて膣から卵巣に直接刺し、卵子を採取します。採卵自体の処置時間は、卵子の数によりますが10〜15分程度です。

Step3.精子を採取する(採精)

採卵日に同じく精子も採取します。医療機関の採精室で採取する方法と、自宅で採取する方法があります。自宅で採取する場合は、精子の質を担保するために、採取から3時間以内のものを提出する必要があります。

Step4.卵子の状態を確認する(検卵)

採卵した卵子の状態を胚培養士が確認します。採取した卵子のなかには、変形しているものや、成長が十分でない卵子も含まれていることがあります。卵子は卵胞液に包まれているため、血液や細胞を取り除き、受精できる質のよい卵子を検卵します。

採卵後の流れ

採卵後の流れMV
採卵後は回復室で休むことになります。回復したのち、担当医から採卵の結果や個数を教えてもらえます。採卵は日帰りでおこなうことが可能です。

その後、卵子と精子を受精させて受精卵(胚)となり、これを培養して再び女性の子宮に移植する流れとなります。着床率を上げるホルモン補充をおこないながら、移植から10日目前後に妊娠判定をおこないます。

体外受精の全体的な流れは、こちらの記事でも解説しています。
>「体外受精のスケジュールは?流れをわかりやすく解説」を読む

体外受精の採卵数平均はどれくらい?

採取できる卵子の個数は個人差がありますが、年齢によっておおよその平均があるとされています。体外受精の採卵数平均は25歳で10個弱、35歳で5個前後、40歳になると3個弱です。採卵数平均は年齢を重ねるほど、個数も低下していきます。

採卵数が3個以下の場合、受精卵が得られない割合は15%以上になるとされています。一方、採卵数が7個以上あれば、受精卵が得られない割合は1%程度といわれています。つまり、採卵数が多いほど受精卵が育つ確率は高くなるということです。

重要なのは個数よりも卵子の質

体外受精においては数よりも質が重要とされています。採卵数が多くても卵子の質が良好でない場合、受精卵(胚)が育たなかったり、着床できなかったりすることもあります。

しかし1個の卵子だったとしても、質がよければ体外受精が成功することはあります。採卵の個数も確かに重要ですが、卵子の質はより重要です。
年齢とともに卵子の質は低下し、体外受精などの不妊治療をしても成功しないケースもあります。老化してしまった卵子は元には戻りません。

過度なストレス、喫煙、偏った食生活なども卵子の質低下につながるといわれています。年齢が若いうちに妊活や不妊治療を始めるのはもちろんですが、日頃の生活習慣も見直してみましょう。

採卵に関するよくある質問

Q. 採卵は痛い?痛みを和らげる方法はある?

採卵の痛みは、一般的には耐えられる程度の痛みとされています。
不安な場合は細い採卵針を使用する、痛み止めの坐薬を使用するなどで痛みを和らげることができます。また静脈麻酔であればほとんど痛みは感じないといえます。

採卵の痛みについては、こちらの記事でも解説しています。
>「体外受精の採卵は痛い?不妊治療の痛みや和らげる方法を解説」を読む

Q. 採卵前、採卵後に気を付けるべきことは?

採卵前にマニキュアやジェルネイルは落としておく必要があります。これは指先の酸素濃度を測る機械を装着するためです。
また、採卵後の帰宅時の車の運転は危険なため、公共交通機関を利用することを強くおすすめします。採卵当日は、無理せず安静に過ごしましょう。

採卵後の過ごし方は、こちらの記事でも解説しています。
>「体外受精の採卵後の過ごし方とは?」を読む

Q. 採卵はいつ実施する?月経開始から何日目?

体外受精の採卵は、月経開始から10〜14日頃に実施されます。ただし、卵胞の成熟具合などによって採卵日は前後します。

採卵日の実施日については、こちらの記事でも解説しています。
>「体外受精の採卵日は何日ごろ?」を読む

Q. 採卵は日帰りでできる?

採卵は日帰りでおこなえます。採卵自体の処置時間は、10〜15分程度です。ただし採卵処置前の準備や採卵後に安静にする時間があります。

Q. 体外受精の採卵は間隔を空けるべき?

排卵誘発剤を使用する場合、2ヵ月程度の間隔を空けることが望ましいとされています。卵巣を適度に休ませることで、質のよい卵子を採卵できる可能性があるからです。

採卵実施の間隔については、こちらの記事でも解説しています。
>「体外受精の採卵は間隔をあけた方がいい?」を読む

不妊治療についてお悩みなら六本木レディースクリニックへ

採卵は体外受精のなかの重要なプロセスのひとつで、その後の妊娠率に関わります。質がよい卵子を数多く採卵できれば、成功率も向上するといえるでしょう。ただし採卵数の平均は、年齢を重ねるほど低下する傾向にあります。また卵子の質も同様に加齢によって低下するため、早めの治療を検討することをおすすめします。

六本木レディースクリニックは不妊治療・体外受精専門のクリニックです。患者さまの身体的負担にも配慮した、痛みを感じにくい無痛採卵をおこなっています。体外受精の豊富な実績があり、痛みに弱いという方も安心して採卵に臨んでいただけます。不妊治療・体外受精を検討中の方は、ぜひ当院にお任せください。



仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

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経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務
母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
国立成育医療研究センター不妊診療科
六本木レディースクリニック勤務
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本産科婦人科内視鏡学会

運営者情報

運営クリニック 六本木レディースクリニック
住所 〒106-0032
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院長 小松保則医師