目次
「体外受精」はどんな治療法?
体外受精は、一般不妊治療よりさらに高度な技術を要する生殖補助医療(ART)のひとつです。
卵子を採取して体外へ一度取り出し、精子をふりかけて受精させ、受精した受精卵(胚)をふたたび子宮内へ移植して着床・妊娠を試みる方法です。
体外受精は年齢が高い方や、何らかの原因で一般不妊治療で妊娠に至らなかった場合に適応となります。
年齢にもよりますが、体外受精の胚移植1回あたりの妊娠率は40%程度といわれています。
妊娠率には個人差があり、何回目で妊娠できるかは一概には言えません。1回で妊娠できた人や、母体が高齢(40代など)の場合は、7〜8回で妊娠に至った例もあるといいます。
妊娠の可能性が高まるのは、不妊治療の統計からいうと最初の4回目までです。
4回目までに妊娠する割合は90%となっており、回数を重ねるごとに妊娠する割合が高まります。
体外受精は何回目で成功する?年齢別の成功率
体外受精は、統計的に3〜4回目で妊娠に至るケースが多いとされています。35歳未満の女性であれば、約80%の方が3回目までに妊娠に至るといいます。
体外受精の成功率は年齢によって異なり、特に30代後半になると成功率の低下が顕著になります。以下では、日本産婦人科学会の2021年のデータをもとに、年齢別の成功率についてご紹介します。
20~29歳の体外受精の成功率
20代の体外受精の成功率は、40%以上とされています。日本産婦人科学会の2021年のデータでは、48.6%の妊娠率で年齢別で最も高い傾向にあります。
また、妊孕性が高い20代では、不妊治療を受けずに自然妊娠で子どもを授かる方が約9割とされています。そのため、タイミング法や人工授精といった、自然妊娠に近い不妊治療も有効です。
20代の体外受精の成功率の詳細はこちらの記事でも解説しています。
> 「体外受精の成功率は20代の方が高いの?」を読む
30~34歳の体外受精の成功率
30代前半の体外受精の成功率は、37%程度とされています。日本産婦人科学会の2021年のデータでは、30〜32歳で47.4%、33〜35歳で44.1%と、いずれも40%以上の妊娠率が報告されています。
30代前半、特に33歳までを目安として、妊娠率は20代とほぼ変わらないといわれており、多少妊娠率は下がるものの、依然として高い成功率が期待できるといえるでしょう。
35~39歳の体外受精の成功率
30代後半の体外受精の成功率は、30%程度とされています。日本産婦人科学会の2021年のデータでは、36〜38歳で39.1%、39〜41歳で30.3%で、妊娠率の低下が顕著に現れています。
35歳がひとつの目安とされており、身体の状態によっては人工授精をスキップして、体外受精からスタートする場合もあります。
30代の体外受精の成功率の詳細はこちらの記事でも解説しています。
> 「30代女性の体外受精での妊娠成功率はどのくらい?」を読む
40代の体外受精の成功率
40代の体外受精の成功率は、10〜30%程度で、20代・30代と比較すると低下傾向にあります。
日本産婦人科学会の2021年のデータでは、39〜41歳で30.3%、42〜44歳で18.1%、45歳以降は7.3%と報告されています。30代と同じく、40代前半と40代後半で成功率が大きく異なり、45歳以降では10%を下回る場合もあるようです。
40代での妊娠や出産も珍しくはありませんが、治療期間や通院回数は多くなる可能性があります。40代の体外受精で、複数回トライしても妊娠に至らない場合、顕微授精へのステップアップを早めに検討する場合もあります。
40代の体外受精の成功率の詳細はこちらの記事でも解説しています。
> 「40歳の体外受精での妊娠成功率は何%?」を読む
50代以降の体外受精の成功率
50代で妊娠した症例もありますが、確立としては大幅に低下してしまいます。また、高齢出産は母体に大きな負担がかかります。
閉経すると妊娠ができなくなるのが一般的で、日本人女性が閉経を迎える年齢は、平均50〜51歳です。50代の妊娠率の統計的なデータはありませんが、非常に難しいといわれています。
六本木レディースクリニックの実績
2023年度高度生殖医療妊娠率
日本産婦人科学会(※1) | 六本木レディースクリニック(※2) | |
---|---|---|
〜29歳 | 48.6% | 52.7% |
30〜32歳 | 47.4% | 58.0% |
33〜35歳 | 44.1% | 55.4% |
36〜38歳 | 39.1% | 45.5% |
39〜41歳 | 30.3% | 37.9% |
42〜44歳 | 18.1% | 27.5% |
45歳〜 | 7.3% | 16.4% |
※1 出典:日本産科婦人科学会、2021年のARTデータブックのデータを使用。妊娠周期数/移植周期数より算出
※2 出典:六本木レディースクリニック「当院の治療実績」
上記は、日本産婦人科学会の2021年のデータと当院の治療における成功率(2023年)を比較したグラフです。
いずれの年代でも平均実績を上回る妊娠率を残しています。とくに33〜35歳の妊娠率は、日本産婦人科学会の44.1%に対し、当院は55.4%と同年代平均実績の+11.3%を上回る結果となりました。
年齢によって体外受精の成功率が変化するのはなぜ?
体外受精の成功率は、年齢に大きく関係しています。
その理由のひとつとして、加齢による卵子の質の低下や卵子の数の減少があげられます。
女性は生まれた時点で原始卵胞(卵子のもと)の数が決まっており、年を重ねるごとに卵子の数は減少していくのです。
また、年齢とともに卵子の質も低下していきます。生まれた時に卵子のもとはもうすでに存在しているため、20歳女性の卵子は20年経過した卵子であり、40歳女性の卵子は40年経過した卵子であるといえます。
つまり、卵子も年齢と同じく老化して衰えていくということになります。
このように卵子の数や質は年齢とともに下がっていき、着床率の低下や流産率の上昇につながります。これが体外受精の成功率が年齢により変化する理由です。
体外受精と顕微授精、成功率が高いのは?
日本産婦人科学会の調査によると、2022年の体外受精(IVF)の治療周期数は91,402件。顕微授精(ICSI)は187,816件で、顕微授精の件数が多い結果となっています。
成功率を直接比較する統計的なデータはありませんが、顕微授精の方が妊娠率が高いとされているのが一般的です。
体外受精は、1個の卵子に約10万個の精子をふりかけ、精子が自力で受精します。一方、顕微授精は、1個の卵子にひとつの精子を直接注入して受精させる方法です。
良質な精子を選定して顕微鏡下で受精をサポートすることから、受精率は80%以上に達します。この高い受精率が、その後の妊娠率を向上させる理由のひとつと考えられます。
胚移植の方法で成功率は変わる?
体外受精と顕微授精の胚移植の方法には、主に「新鮮胚移植」と「凍結胚移植」の2つがあります。以下は、日本産婦人科学会の2022年のデータをまとめたものです。
妊娠に至る成功率は、凍結胚移植の方が高い傾向にあります。
新鮮胚移植 | 凍結胚移植 | |
---|---|---|
治療周期数 | 279,218件 | 264,015件 |
妊娠数 | 6,885件 | 98,307件 |
移植あたりの妊娠率 | 21.9% | 37.9% |
参考:公益社団法人日本産科婦人科学会「2022年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績」
新鮮胚移植は、凍結せず採卵と同周期に子宮に移植する方法で、妊娠判定までの期間が短く、費用が抑えられるメリットがあります。ただし、採卵後は卵巣が刺激されているため子宮内膜の着床環境に影響を与える可能性があり、妊娠率は低くなる傾向にあります。
凍結胚移植は、受精卵を一度凍結し、別の周期で融解して移植する方法です。採卵周期とは別の周期で移植することで子宮環境が整い、妊娠率が高まるとされています。
ただし、凍結胚を融解する際に、まれに受精卵がダメージを受ける可能性などもあります。
凍結胚移植の妊娠率はより高い傾向にありますが、いずれもメリット・デメリットがあります。どの方法が合うかは患者さまによって異なるため、医師と相談のうえ適切な方法を選択する必要があるでしょう。
体外受精の成功率を高めるポイント
体外受精の成功率は年齢が大きく影響してしまいますが、成功率を高めるためにできることがあります。
基本的なことに思えるかもしれませんが、どれも重要な要素です。体外受精の成功率を高めるために、主に次のポイントを押さえておきましょう。
早めに計画を立てる
妊娠の成功率を上げるためにも、まずは早めに不妊治療の計画を立てましょう。やはり早いうちに不妊治療を始めるに越したことはありません。
「将来子どもが欲しい」と思ったら、パートナーがいる方はまず夫婦で話し合うことをおすすめします。
いつ頃までに子どもが欲しいのか、何人子どもが欲しいかなどを話し合うことで、どのタイミングで妊活や不妊治療を始めるかが見えてきます。
早めに計画を立てて準備しておくことで、適齢期を逃さず成功率を上げることにつながります。
最適な治療法を選択する
治療法の選択は、体外受精の成功率に大きく関わります。
体外受精の治療計画は、年齢や身体の状態によって一人ひとり変わります。卵巣刺激法や胚移植の方法など、さまざまな選択肢があるなか最適な方法を選択することが、成功率を高めることにつながります。
生活習慣を整える
不規則な生活習慣は、成功率の低下につながる可能性があります。過度な飲酒、喫煙、寝不足、過度なストレス、食べ過ぎなどは禁物です。
生活習慣を整えるだけで成功率を劇的に高めるのは難しいですが、不妊治療に加え、健康的な身体づくりをすることで、成功率の低下やリスクを回避できるでしょう。
回数を重ねても妊娠しない可能性があることを知っておく
1回目の体外受精で妊娠に至らない場合、何度か治療を繰り返すことになります。
体外受精は基本的に回数を重ねると妊娠する割合が高まり、特に4回目までに妊娠する割合が高いようです。ただし年齢が上がるにつれて成功率が変わってきます。
何度繰り返しても妊娠しない場合は次のステップへ移るのも手です。また妊娠率を高めるためには、年齢によって何回までを限度に考えるかがポイントになってきます。
信頼できるクリニックに相談する
体外受精による不妊治療は長期に渡り、通院回数も増える傾向にあります。
普段の生活や仕事を両立しながら不妊治療を継続するには、無理のない治療計画が必要であり、治療を成功させるカギです。
体外受精は医師の二人三脚といえます。
信頼できるクリニックを選んで相談することが、ひいては不妊治療の成功につながるでしょう。
六本木レディースクリニックは、不妊治療・体外受精専門のクリニックです。患者さま一人ひとりのライフスタイルに合わせた、完全オーダーメイドの治療計画をご提案しています。看護師による無料相談も承っておりますので、お気軽にご相談ください。
体外受精の成功率に関するよくある質問
体外受精の成功率に関するよくある質問をご紹介します。
体外受精は何回で成功する?成功率は?
体外受精の胚移植1回あたりの妊娠率は、年齢により個人差がありますが40%程度です。この妊娠率のもと、累計で90%程度の方が4回目までに妊娠しています。
年齢によって体外受精の成功率は変わる?
体外受精の成功率は高齢になるほど低くなります。
体外受精を繰り返すと妊娠確率が下がる?
体外受精は4回までを目安に妊娠確率が高まる傾向にあります。5回目以上で妊娠しない場合、他の治療法を検討した方がよい場合があります。
体外受精は双子を妊娠する確率が高い?
35歳以上の女性、または体外受精で2回連続して妊娠に至らなかった場合、2つの胚を移植することが許容されています。そのため、2つの胚を移植した場合、双子を授かる可能性が高まるといえます。
双子を授かる確率については、こちらの記事でも解説しています。
>「双子を授かる確率は?不妊治療や体外受精は多胎妊娠しやすいって本当?」を読む
体外受精は早産・流産の確率が自然妊娠よりも高い?
早産・流産の確率は、自然妊娠と大差はありません。体外受精の治療自体に、早産・流産リスクを上げてしまう原因はなく、年齢による要因が大きいとされています。
体外受精の流産率に関しては、こちらの記事でも解説しています。
>「体外受精と自然妊娠の流産率に差はある?不妊治療と流産の関係」を読む
体外受精の成功率を高めるためにできることは?
適切な治療の選択、生活習慣の改善、信頼できるクリニック選びなどが体外受精の成功率を高めることにつながります。
まとめ
体外受精の成功率は年齢によって変化し、母体の年齢が若いほど成功率は高まります。
20代〜30代前半までは比較的成功率が高いですが、35歳以降から急激に低くなります。
早めに不妊治療を始めることが、成功率を上げることにつながります。不妊治療に加えて生活習慣を改善することも重要です。
当院の2023年の治療における妊娠率は、20代〜30代前半で50%以上、30代後半でも45%以上の高い実績を残しています。
体外受精をはじめとした不妊治療を専門に、患者さまに合わせた無理のない治療計画をご提案します。
「将来子どもが欲しい」とお考え中の方は、実績と信頼のある当院にお気軽にご相談ください。