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体外受精のロングプロトコールは長期計画で排卵誘発を行います
体外受精の方法の1つであるロングプロトコールは、ロング法とも呼ばれる方法で、月経が来る前の周期から排卵誘発を始めるものです。
比較的治療が短期間になるショートプロトコールに対して、このように呼ばれています。
月経前周期で体温が上昇する高温期にスタートし、採卵スケジュールをコントロールしやすいのが特徴です。
ロングプロトコールは質のよい卵胞の生育が期待できる方法です
ロングプロトコールでは、月経前周期の中でも体温が上昇する高温期の中ごろから準備を始めます。
この時期は、黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されることから、黄体期とも呼ばれる時期です。
方法としては、まずGnRHアゴニスト製剤の点鼻薬を開始し、採卵日直前まで毎日続けます。
これによりLH(黄体形成ホルモン)を抑制し、質のよい卵胞を育てる効果が見込めるのです。
そして月経が始まってから2~3日後に排卵誘発剤・hMG(ゴナドトロピン)やFSH(卵胞刺激ホルモン)製剤の注射を始め、1週間くらい続けて投与します。
こうして排卵を促した上、卵胞を十分に育てていくわけです。
そして卵胞の育ち方に応じて採卵日を設定し、点鼻薬と注射を中止した上でhCG製剤を注射し、排卵させます。
すると大体36時間後くらいに排卵が起きますから、そのタイミングで採卵を行うというのが手順です。
この方法のメリットには、以下のようなものがあります。
- GnRHアゴニスト製剤の点鼻投与により、LHやFSHを抑制できることで卵胞の生育を均一化できる
- 質のよい卵胞の生育が期待できる
- 排卵が早まってしまうのを防ぐことができる
- 排卵日のコントロールがしやすい
一般的に行われる方法ですが注意事項もあります
体外受精を行う不妊治療の中で、採卵のためにロングプロトコールは一般的に用いられる方法ですが、注意すべき点もあります。
その注意事項とは、以下のようなものです。
- 点鼻薬の投与を開始してから採卵日までの期間が長い
- 点鼻薬によってLHやFSHを完全に抑制してから排卵誘発を行うため、hMGやFSH製剤の注射回数が多くなる
- 注射回数や通院回数が多くなることで、費用がかさんでしまう
- 最終的な排卵にhCG製剤を使用することにより、卵巣への刺激が強く卵巣過剰刺激症候群を発症する場合がある
- 卵巣機能が低い場合はLHやFSHの分泌を抑制しきれず、卵胞の生育にばらつきが出る
- 卵胞数が少ない場合は黄体ホルモンが卵胞数を減少させる原因を作りやすい
- 抑制したLHやFSHがもとの状態に戻るまでに時間がかかることがある
ロングプロトコールでは、長期的にじっくり準備を行うことから排卵のコントロールがしやすいのが大きな特徴ですが、一方で長期的な薬物投与は避けられないのも確かです。
体外受精による不妊治療を行うときは、このような注意点を把握しておき、さらに主治医からの説明をしっかり受けることをおすすめします。
ロングプロトコールは37歳以下で卵巣機能が一定以上保たれている人に向いています
ロングプロトコールは、卵巣機能が一定以上保たれている人であれば適用が可能です。
その卵巣機能を計測するには、血中のAMH(アンチミューラリアンホルモン)の値や実際の卵胞数を用います。
これらの値が一定数を保たれていれば、ロングプロトコールを受けることが可能になるのです。
具体的な数値を言うと、AMHの数値が1mlあたり1.4~4.0ngであること、左右の卵胞数が10~20個くらいであれば、治療を受けることができるでしょう。
また年齢は37歳以下の比較的若い人に向いています。
そしてこの方法の大きなメリットは排卵日のコントロールであるため、採卵のスケジュールをあらかじめ決めておきたいという人にも適しています。
その他、多能縫製卵巣症候群(PCO)によって不妊に陥ってしまった人にもこの方法が適用されることがあります。
PCOは、何らかの原因によって排卵が起こりにくくなるもので、不妊をはじめ月経不順または過多などの不具合を起こすほか、男性ホルモンが増加するため体の男性化も起きやすい症候群です。
PCO自体の明確な治療法は発見されていませんが、PCOによる不妊状態を改善するためならば、ロングプロトコールが有効的だと言えます。
(まとめ)体外受精のロングプロトコールってどんな方法?
体外受精の方法の1つ、ロングプロトコールは、月経が始まる前の周期から排卵誘発を始める方法です。
月経前周期の高温期から始めることや、採卵スケジュールをコントロールしやすい特徴があります。
ロングプロトコールでは、高温期中期から点鼻薬の投与を始め、LHやFSHを抑制して卵胞を育てます。
そして月経開始2~3日後から排卵誘発剤の注射を始め、卵胞が育ったらhCG製剤で排卵させて採卵を行うという手順です。
ロングプロトコールは排卵のコントロールがしやすい体外受精の方法ですが、注意すべき点もいくつかあります。
薬剤投与の回数が多くなることや卵巣過剰刺激症候群を発症しやすいことなどが主に挙げられるでしょう。
ロングプロトコールを受けるには、卵巣機能がある程度保たれていて、血中のAMH値や卵胞数が一定ラインある37歳以下の若い人なら適用されます。
また採卵スケジュールをあらかじめ決めたい人、PCOの人にも有効的と言えます。