妊娠がわかったら、出産後の生活や予定を立てるためにも出産予定日を把握しておきたいところです。出産予定日の計算ツールなどを使えば、大まかな予定日を容易に把握することはできます。しかし、より的確な妊娠期間・出産予定日を算出するにはどうすればよいのでしょうか?
この記事では、体外受精と自然妊娠の場合の妊娠期間の考え方や、より的確な出産予定日の決定方法を解説します。
目次
体外受精と自然妊娠は妊娠週数の計算が違う?
妊娠週数とは妊娠期間を数える単位のことで、「妊娠◯週◯日」のように数えられます。
例えば妊娠初期は「妊娠13週6日まで」、妊娠中期は「14週0日〜27週6日」、妊娠後期は「28週0日以降」と区分されています。
ご自身が妊娠何周目なのかを把握することは、正確な出産予定日を知るためにも重要です。この妊娠週数の計算は、体外受精と自然妊娠では数え方が違います。
それぞれの妊娠週数と出産予定日の計算方法については後述します。
人工授精や体外受精であっても、卵子と精子がひとつになって受精する仕組みは自然妊娠と同じです。妊娠週数と出産予定日の計算方法に違いはあれど、妊娠の経過や生まれてくる赤ちゃんに違いはありません。
なお、より正確な妊娠期間と出産予定日は、産婦人科の担当医が判断・決定することになります。
出産予定日の決め方
正確な出産予定日は、妊娠初期(13週6日)までに決定するのが望ましいとされています。出産予定日の決定方法は、以下の3つの方法が用いられます。
- 月経周期と最終月経の開始日から算出する方法
- 超音波検査値から算出する方法
- 胚移植日または排卵日から算出する方法
排卵日が特定しづらい自然妊娠の場合は、月経周期と最終月経の開始日からまず算出します。加えて妊娠8週以降に超音波検査をおこない、胎児の頭殿長(CRL)を測ることで、より正確な出産予定日に修正していきます。
排卵日が特定しやすい体外受精の場合は、月経周期や超音波検査値は用いず、胚移植日または排卵日から出産予定日を算出します。
胚移植日か、特定できる排卵日
体外受精の場合、排卵した日を妊娠2週0日として出産予定日を算出します。排卵したと考えるタイミングは、採卵日や胚移植日、培養日数の情報をもとに決定されます。
自然妊娠の場合は排卵日が不明瞭です。そのため、自然妊娠の場合は基礎体温や排卵チェッカーなどの情報から特定できる排卵日をもとに、予定日を算出します。なお、前述のとおり自然妊娠では「月経周期と最終月経の開始日」と「超音波検査値」から算出することが一般的です。
妊娠8〜10週の頭臀長(頭からお尻までの長さ)
超音波検査で、胎児の頭からお尻までの長さ(頭臀長、またはCRLとも略される)を測定します。この数値と排卵日の情報とともに、より正確な出産予定日を算出します。
頭臀長の測定は実際の妊娠週数とのずれが少ないといわれており、正確な出産予定日をもとめる指標として用いられています。
妊娠11週以降の大横径(頭の横幅)
妊娠11週目以降は胎児が動き始めることで測定に誤差が生じやすくなります。
そのため、妊娠11週以降には頭の横幅(大横径、またはBPDとも略される)の測定が推奨されます。
自然妊娠の出産予定日・妊娠期間の考え方
自然妊娠の場合、前述したように正確な排卵日が特定しづらいといえます。そのため月経後胎齢の考え方で、最後の生理開始日を0日としてカウントし、妊娠期間を計算するのが一般的です。
また、最終月経日や周期、または基礎体温などから特定できた場合の排卵日をもとに、出産予定日を決定します。ただし、月経周期が28日周期でない方や生理不順の方は、その点を加味して補正した予定日の決定が必要です。
さらに妊娠8週目以降に超音波検査で胎児の頭からお尻までの長さを測定し、より正確な予定日を算出していきます。
出産予定日の計算を誤りやすい例
自然妊娠の場合、排卵日が特定できないことに加え、情報が不十分で出産予定日の計算で誤差が生じるケースがあります。
主に次のような例があげられます。
月経周期が不明瞭
不妊治療や生殖補助医療などによる妊娠では、月経周期や基礎体温の管理が基本です。
しかし自然妊娠の場合、月経周期の把握が人によって不十分であることがあり、出産予定日に誤差が生じやすいといえます。予定日を正確に知るためにも、月経周期はもちろん、基礎体温も含めて記録しておくことが大切です。
「妊娠0週0日」の認識が誤っている
最後の月経開始日を妊娠0週0日として計算するのが通常ですが、そもそもこの基準日の認識が誤っているケースがあります。特に性交日や、排卵日を0日として認識している場合がみられます。
性交日は基本的に基準とはなりません。自然妊娠においては排卵日が明確でないため、最終月経日が基準となるのが一般的です。
体外受精と自然妊娠とでは数え方や計算方法が少し異なるため、注意が必要です。
体外受精の出産予定日・妊娠期間の考え方
体外受精の場合は受精日(排卵日)が明確であるため、採卵日および胚移植日の情報をもとに正確な出産予定日の決定が可能です。凍結胚移植の場合は、胚移植日に培養日数を加えて出産予定日を計算することになります。
排卵日の特定は、移植する細胞の状態ごとに次のように考えられます。
- 4細胞期胚:胚移植日の2日前が排卵日
- 8細胞期胚:胚移植日の3日前が排卵日
- 胚盤胞:胚移植日の5日前が排卵日
上記の排卵日を妊娠2週0日としてカウントし、出産予定日と妊娠期間を計算します。
「受精後胎齢」と「月経後胎齢」
妊娠期間をもとめる際に用いられるのが「受精後胎齢」と「月経後胎齢」です。
受精後胎齢は、受精日(排卵日)を妊娠1日目としてカウントし、妊娠週数を計算します。また月経後胎齢は、最後の月経開始日を0週0日としてカウントし、妊娠週数を計算します。
体外受精などによる妊娠の場合は、受精日(排卵日)が明確であるため受精後胎齢で正確な妊娠期間が計算できるといえます。しかし自然妊娠の場合は、受精日(排卵日)の特定が困難であるため、月経後胎齢が採用されるのが一般的です。
「十月十日(280日)」といわれるのはなぜ?
日本ではよく、妊娠期間を「十月十日(とつきとおか)」で表しますが、実際の妊娠期間とは多少異なります。
実際の妊娠期間は280日とされており、これは日本での一般的な月経周期が28日であることから由来しています。28日を1ヵ月とし、280日(40週)が一般的な妊娠期間です。ただし、月経周期には個人差があり、月経周期が不整である場合も含め、必ずしも妊娠期間が280日間であるとは限りません。
妊娠が順調か心配……そんな方に知ってほしいこと
妊娠中は、精神的に不安定になる方も少なくありません。特に初めての妊娠・出産の場合はわからないことも多く、不安に感じる方も多いでしょう。
妊娠中は次のことを知っておくと、過度なストレスを抱え込まずに済むかもしれません。
出産予定日に生まれるほうが珍しい?
出産予定日は、妊娠期間280日(40週)が基準となります。しかし実際は、280日未満で出産を迎えるケースも多いといいます。
公益社団法人日本産科婦人科学会 周産期委員会「令和4年度 委員会報告」によると、妊娠38週で出産した件数が最も多い結果が報告されています。次いで多かったのは妊娠39週であり、いずれも40週未満でした。
つまり妊娠期間280日(40週)はあくまで1つの指標にすぎず、出産予定日には多少のずれが生じ、個人差があるといえます。
参考:公益社団法人日本産科婦人科学会 周産期委員会「令和4年度 委員会報告」
体外受精も週数ずれは起こり得る
排卵日が特定しやすい体外受精であっても、出産予定日に週数ずれが起こることがあります。
出産予定日は、胎児のサイズの測定値なども加味して推測されますが、成長速度は一人ひとり異なります。すべての胎児が同じように育つわけではないため、多少の誤差やずれは生じるものと考えましょう。
そのため、妊娠週数と胎児の成長に多少のずれが生じたとしても、深刻に悩む必要はありません。
できるだけリラックスして過ごそう
妊娠週数に対して胎児のサイズが小さいと、妊娠初期の流産のリスクがあるのではないかと不安に感じる方もいるかもしれません。
しかし、前述したように多少の週数ずれはよくあるといいます。胎児の心拍が確認できれば、流産のリスクは少なくなります。
過度なストレスは母体にもよくありません。妊娠初期は体調管理に注意しながらも、心拍の確認ができればひとまず安心して、リラックスするように心がけましょう。
自然妊娠も体外受精も、妊娠すれば同じ
体外受精に対して、心理的に抵抗を感じてしまう人は少なくありません。
人工的に赤ちゃんを授かることに、パートナーが不安を感じているというお悩みも聞かれます。特に「人工」という単語が不安にさせているという面もあるでしょう。
しかし、体外受精であっても自然妊娠であっても、妊娠すれば同じです。妊娠中の経過も、生まれてくる子どもにも違いはありません。
卵子と精子がひとつになる受精の過程そのものは、人の手を加えないため自然妊娠と変わりありません。体外受精についての正しい知識を身につけることで、認識が変わる方も多いはずです。
人工授精や体外受精を検討しているが、パートナーの協力が得られない方もいるかもしれません。まずは不妊治療について、正しい知識で理解してもらうことから始めてみましょう。
(まとめ)体外受精と自然妊娠は妊娠週数に違いがあるの?
体外受精と自然妊娠とでは、妊娠期間(妊娠週数)の数え方や出産予定日の計算方法に違いがあります。体外受精は排卵日を妊娠2週0日として、自然妊娠では最後の月経開始日を0週0日として妊娠期間や出産予定日を出します。
より正確な出産予定日は、産婦人科の担当医が超音波検査を実施して決定されます。
体外受精と自然妊娠で計算方法の違いはあれど、妊娠の経過や生まれてくる子どもに違いはありません。なかなか自然妊娠が難しい場合は、人工授精や体外受精で妊娠を試みることになります。
特に体外受精は、高度な医療技術が必要になる治療です。六本木レディースクリニックは、体外受精をはじめとした不妊治療を専門に取り扱っております。看護師による無料相談なども設けておりますので、不妊治療を検討中の方はぜひ当院にご相談ください。