体外受精では、より多くの卵子を採取するため卵巣刺激法(排卵誘発法)をおこないます。アンタゴニスト法は、その卵巣刺激法のひとつです。複数のメリットがあることから、多くの不妊クリニックで採用されています。
この記事では、アンタゴニスト法のメリット・デメリットや対象となる方、採卵に至るまでのスケジュールについて解説します。
目次
体外受精の「卵巣刺激法(排卵誘発法)」とは?
卵巣刺激法(排卵誘発法)は、より多くの質の高い卵子を採取するために薬を用いて卵巣を刺激する方法です。卵巣を刺激して卵子が十分に育つように促しながら、未熟な卵子が排卵されないようにコントロールする役割もあります。
卵巣刺激法には低刺激法と高刺激法があり、卵巣機能や年齢などによって使い分けられます。逆に薬を使用せず自然に育った卵子を採取する場合は、「自然周期法」と呼ばれます。体外受精の成功率を上げるためにも、適切な方法を選択することが重要です。
アンタゴニスト法とは?
アンタゴニスト法は、卵巣刺激法のなかでも高刺激法に分類される、GhRHアンタゴニスト製剤を使用する方法です。FSH/HMGとGhRHアンタゴニスト製剤を注射し、排卵を抑えながら卵胞を発育させ採卵に備えます。
アンタゴニスト法の適用対象
アンタゴニスト法は、次のような方が適用対象です。
- 月経周期が正常な方(25〜38日以内)
- 卵巣機能が低下している方
- AMH値が低い方
卵巣機能の低下で卵子が育ちにくい体質や、AMH値が低く、採卵数が少ないことが予想される場合、アンタゴニスト法が適用となります。
アンタゴニスト法の特徴・メリット
アンタゴニスト法は、2006年に日本に導入された、比較的新しい卵巣刺激法です。他の刺激法にはない特徴やメリットをご紹介します。
投薬期間が短く、負担を軽減できる
アンタゴニスト法は、他の刺激法と比べると投薬期間が短く、薬剤の使用量も少ないため、負担が少ないのが大きなメリットです。他の刺激法では、排卵誘発前から1日数回に分けて点鼻薬を使用する必要があり、精神的・身体的な負担も少なくありませんでした。
アンタゴニスト法では、卵子の発育具合をチェックして、成長し始めた頃から採卵までの期間のみで済みます。また投薬は注射が必要ですが、自宅で自己注射をすることで、通院回数を減らすこともできます。事前に注射の打ち方なども教えてもらえるので安心です。
自然排卵を抑えられる
アンタゴニスト法は排卵を抑えながら卵胞を育てられるため、自然排卵してしまうリスクを回避できます。
自然排卵の心配なく卵胞の育ち具合が均等になり、採卵できる状態まで育てることが可能です。これにより、より多くの卵子を採卵できるメリットもあります。
また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こしやすい人でも使用できるのは大きなポイントです。
採卵日をコントロールしやすい
アンタゴニスト法は、排卵を抑えて採卵日をコントロールしやすいメリットがあります。
採卵前に排卵してしまうと、採卵手術をキャンセルせざるを得ません。卵胞の育ち具合にもよりますが、計画的に採卵を実施することができます。
アンタゴニスト法の副作用・デメリット
メリットの多いアンタゴニスト法ですが、次のような副作用・デメリットもあります。
- 軽いアレルギー症状が出ることがある
- 卵胞が育たない場合がある
- ごく稀に早期排卵することがある
- 費用が高くなる傾向にある
GnRHアンタゴニスト製剤を注射することで、注射した部分が赤くなったり、かゆくなったりする軽いアレルギー症状が出る場合があります。
とはいえ、この症状は一時的なもので、アンタゴニスト法に限らずどのような薬でも起こり得るものと考えられます。
または排卵抑制の効果は個人差があり、場合によっては卵胞が育たない、採卵数が少なくなることもあります。さらに自然排卵してしまう可能性もゼロではないため、このような副作用や可能性も踏まえておく必要があります。
アンタゴニスト法が向いている人
アンタゴニスト法は、誘発剤の使用量と投薬期間が少ないことから、特に次のような方に向いています。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の人
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣内の卵胞の成長がストップし、複数の小さな卵胞が排卵されずに残ってしまう病気です。
排卵がないことで、月経周期が狂ったり、無月経になったりする症状が現れます。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こしやすい人
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は、体外受精における卵巣刺激により、過剰に刺激されることで卵巣が肥大化し、腹部や胸部に水が溜まる病気です。
お腹が張る、吐き気がするなどの症状が現れた場合、早期に投薬を中止する必要があります。
他の卵巣刺激法で採卵率が悪かった人
採卵刺激法には、他にもクロミッド法やショート法、ロング法などがあります。アンタゴニスト法は、これらの刺激法に比べると卵胞が発育しやすく、より多くの卵子を採取できる可能性があります。
他の卵巣刺激法でよい結果が得られなかった場合、アンタゴニスト法を検討する場合があります。
アンタゴニスト法のスケジュール例
アンタゴニスト法を使用した採卵までは、次のような流れが一般的です。
なお、卵胞の育ち具合は個人差があり、それによってスケジュールは若干変動します。
1. 月経が始まる3日前までに受診します。卵巣の状態確認やホルモン値の検査をおこないます。
2. 月経開始から3日目から、FSH/HMGの注射を始めます。自宅で自己注射が可能なので、通院回数は少なくて済みます。※クリニックで受けることも可能
3. 月経開始から8日目に卵胞チェックをおこないます。最も大きな卵胞のサイズが14〜16mm程度に育ったら、GnRHアンタゴニスト製剤の注射を開始して排卵を抑制しながら卵胞を育てます。
4. 月経開始から11〜12日目頃に再び卵胞チェックをおこないます。最も大きなサイズが16〜18mm程度に育っていたら、hCG注射の投与をトリガーに、2日後に採卵を実施します。
体外受精についてお悩みなら六本木レディースクリニックへ
アンタゴニスト法はメリットの多い卵巣刺激法ですが、適用となるかどうかは患者さまの年齢や卵巣機能の状態などによって異なります。他にもさまざまな方法があり、一人ひとりの状況や身体に合った方法を選択することが、体外受精の成功へとつながります。
六本木レディースクリニックは、一人ひとりの精神的・身体的・経済的な面を考慮した「オーダーメイド治療」をご提案しています。症状やご希望をヒアリングし、最適な治療法を選択していきます。自分に合った治療を探している、体外受精を検討している方は、まずは当院のカウンセリングでお気軽にご相談ください。