体外受精の採卵における空胞とは、卵子が中に入っていない卵胞のことです


体外受精では、卵子を取り出す採卵が行われます。
通常卵子は卵胞という袋の中で、卵胞液に包まれています。

月経が始まると、いくつかの卵子が成熟し始め、排卵日に質のよい卵子ひとつが排出され、残った卵胞は自然消滅します。
しかし体外受精では効率を上げるために複数の卵子を取り出します。

そのため、中には何らかの原因で卵胞内に卵子が入っていない状態の空胞が起こる場合があるのです。

体外受精での空胞は、遺残卵胞や加齢などが原因と考えられています

空胞は、卵胞の中に卵子が入っていない状態ですが、詳しく言うと卵胞壁にくっついて離れない、未成熟の卵子のことです。
空胞の原因はいくつか考えられますが、その一つが遺残卵胞です。

通常であれば、排卵後他の卵胞は月経開始後8、9日後に自然消滅して黄体という別の細胞へと変化します。
しかし卵胞が消滅しないで残る遺残卵胞が起こる場合があり、空胞を招くのです。

さらにLH(黄体形ホルモン)の分泌量不足も空胞の要因とされています。
LHは、排卵や黄体化を促す作用があり、黄体化が進むことより黄体ホルモンの分泌が始まります。

しかしLHの分泌量自体が少なかったり、LHの分泌量不足を代用する薬の投与のタイミングが合わなかったりすると、卵子が未成熟で卵胞壁にくっついたままになり、採卵しても空胞の可能性が高まるのです。

また加齢により卵子自体の発育が遅れるなど卵子が老化して、質が落ちやすくなります。
その結果、卵胞が大きくなっても卵子が未成熟のまま、壁にくっつき、空胞となってしまうのです。

空胞を防ぐには卵子の質を上げることが大事です


卵胞が育っていても、中の卵子の発育が悪いと卵胞の壁にくっついて未成熟のままになり、空胞ができてしまいます。
空胞を防ぐには、卵子の発育を促し質を上げることが大事です。

ただ卵子は年齢を重ねるごとに数が減り、質が低下していきます。
女性は誕生時には、原子卵胞という卵子の入れ物が約200万個も体内に存在していますが、加齢と共にどんどん減り、初潮を迎える頃には10分の1の約2、30万個しか残っていません。

さらに20代の頃はキレイな円形をしていた卵子が、30代後半から40代にかけては、楕円など変形してしまいます。
形がいびつで小さい卵子は、精子と受精しにくいほか、受精しても胚が育たない、胚移植しても子宮に着床しにくいといった弊害が生じ、どうしても妊娠確率が下がってしまうことにつながるのです。

また卵子が老化していく中で遺伝子が傷ついて染色体異常が起こる場合もあり、そうなると流産や先天性疾患のリスクも高まります。
体外受精の成功率を上げるためにも、まずは卵子の質を高める必要があると言えます。

卵子の質を上げるには、規則正しい生活と食事がポイントです

空胞の改善には、卵子の質を上げることが大事です。
よい卵子を作るためには、生活習慣や食事の改善が必要となります。

まず睡眠中はダメージを受けた細胞を修復し、卵子の衰えを防ぐホルモンが分泌されます。
とくに分泌が盛んになる午後10時から午前2時まではしっかり眠るようにしましょう。

さらに下半身が冷えると血流が滞り、子宮の血流が悪くなり卵子の劣化にもつながります。
夏でも極端な薄着をやめて、靴下をはく、腹巻をするなど冷えないようにしましょう。

運動不足は血流が滞り、汗をかかないと体内の老廃物が蓄積されて全身を巡り、卵子の質の低下を招きます。
ウォーキングやヨガなどの有酸素運動を続け、汗をかいて卵子を劣化させる有害物質を排出し、代謝を上げることが大事です。

食生活では、身体の酸化を防ぎ卵子へのダメージを最小限に抑えるには、抗酸化作用のある食材の摂取が効果的です。
ビタミンEを含むかぼちゃやナッツ類、カロテノイドを含む人参やいも・トマトやスイカ・エビやカニ・鮭・ビタミンCを含むいちごやキウイなど取り入れましょう。

(まとめ)体外受精の採卵時に起こりうる空胞とは?

1.体外受精の採卵における空胞とは、卵子が中に入っていない卵胞のことです

体外受精では、採卵時に卵胞の中に卵子が入っていない空胞という事態が起こる場合があります。

体外受精では複数の卵胞を取り出すため、何らかの原因で卵子なしの卵胞ができることもあるのです。

2.体外受精での空胞は、遺残卵胞や加齢などが原因と考えられています

体外受精における空胞は、排卵後に他の卵胞が黄体化しないで残ってします遺残卵胞が主な原因とされています。

他にも黄体形ホルモンの分泌量不足、黄体形ホルモン代用薬の投与のタイミングが合わない、加齢による卵子の質の低下も要因と考えられます。

3.空胞を防ぐには卵子の質を上げることが大事です

卵胞が育っても、卵子が未成熟のままなど質が低下すると、採卵時に空胞となる可能性が高まります。

卵子は加齢と共に数が減り、形も楕円などに変形すると受精しにくくなり、妊娠の確率も下がってしまうとされています。

4.卵子の質を上げるには、規則正しい生活と食事がポイントです

空胞改善のために卵子の質を上げるには、十分な睡眠や適度な運動、下半身を中心とした体の冷え防止などが効果的です。

さらに質のよい卵子を作るためには、ビタミンやカロテノイドを含む、抗酸化作用のある食べ物を食事に取り入れることも大事です。



仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

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経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務
母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
国立成育医療研究センター不妊診療科
六本木レディースクリニック勤務
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本産科婦人科内視鏡学会

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院長 小松保則医師