不妊症とは

不妊症とは?

「不妊」とは、子どもを望む健康な男女が夫婦生活を送っても一定期間妊娠しないことを指します。

日本産科婦人科学会では、この「一定期間」を1年と定義しています。子どもが欲しい夫婦が妊活した場合、1年以内に8割の方が妊娠するといわれているからです。したがって、1年経っても子どもができなければ不妊症の可能性が高いといえます。
また、検査や不妊治療を受けるタイミングも「妊活を始めて1年」がひとつの目安となります。

妊娠する仕組み

妊娠する仕組みとして、排卵、受精、受精卵の移動、着床というプロセスがあります。

1排卵
「排卵」とは卵巣内で育った卵胞(卵子が入っている袋)から成熟した卵子が飛び出し、卵巣を出て行くことをいいます。卵子はその後卵管に取り込まれ、精子が来るのを待ちます。

2受精
性行為により男性側から放出された精子は、膣から子宮頸管を通り、子宮内に入ります。一般的に1回の射精で1〜3億個程の精子が放出されますが、その寿命はおよそ72時間です。卵子が待つ卵管までたどり着ける精子は、数十個程度といわれています。この険しい道のりを超えて、卵管で出会った精子と卵子が融合することで、受精が完了します。

3受精卵の移動
無事融合した受精卵は、卵管から子宮内膜まで移動します。ホルモンの影響によりふかふかのベッドのように厚くなった子宮内膜に受精卵(胚)がもぐりこむことを「着床」といいます。着床が完了すると、妊娠が成立します。

不妊症と病気の違い

一般的に病気とは、個人の健康や生命を脅かすものと考えられますが、不妊症は「妊娠をしない状態」のことを意味します。病気も含め原因はさまざまですが、「妊娠しやすい時期に性交をしなかったから妊娠できなかった」や「ストレスで妊娠がしづらい」など、いわゆる病気とはいえないことが原因となっている場合もあります。
不妊治療とは、可能な限りその原因を特定することで、速やかに妊娠という結果に導くことです。また、不妊の原因が不明の場合でも、治療法によって解決策を見出すことが重要となってきます。

「不妊症になりやすい人」は存在する?

不妊症の原因は人によって異なりますが、以下に挙げる方は不妊症になりやすい傾向にあるといわれています。

  • 月経異常(生理不順)がある方
  • 喫煙習慣がある方
  • 生殖器系の疾患がある方

月経は妊娠に関わる女性の大切な機能です。月経が極端に短かったり長かったりする場合、卵巣機能が正常に働いていない可能性があります。
生殖器系の疾患がある方も、不妊症になる傾向にあります。例えば卵巣嚢胞・内膜症や卵管閉塞、子宮筋腫などです。生理痛がひどい、生理周期が不順である場合などは、早めにクリニックを受診しましょう。

また、喫煙習慣がある方も不妊症の原因になり得ます。男女ともに、卵巣機能の低下や精子の数や運動能力低下につながり、不妊になりやすくなるためです。

不妊症の原因

「不妊症」と聞くと女性側に原因があると思われがちですが、実は男性側に原因がある可能性も否定できません。そのため不妊問題の原因を調べて適切な治療をおこなっていくためには、夫婦で協力することが必要です。
不妊治療は、不妊症の原因に応じた治療を選択するのが基本となります。原因を詳しく突き止めることで、より適切な治療計画が立てられ、妊娠率も高められます。

女性側の原因

女性側の不妊症の原因はさまざまですが、大きく分けて以下の4つの原因に分類されます。その他、年齢による不妊や原因不明であることも多くあります。

原因概要
排卵の
問題
卵巣機能に障害があると、卵胞が育たない、排卵が起こらないといった問題が生じて不妊につながります。
原因としては、卵巣機能自体に問題がある場合と脳の視床下部や下垂体に問題がある場合などが考えられます。また、極度の精神的ストレスや短期間の過度なダイエットなども月経不順を引き起こし、排卵障害となることがあります。
卵管の
問題
卵管狭窄や卵管閉塞など、卵管の通過性に問題があると、卵子を取り込みにくくなり不妊につながります。
原因としては、クラミジア感染症、子宮内膜症による卵管周囲の癒着、腹腔内の炎症などが考えられます。
子宮・子宮頸管
の問題
子宮筋腫や子宮内膜ポリープがあることで、着床がうまくできずに不妊の原因になります。また、子宮の入り口である子宮頸管の炎症やポリープ、頸管粘液の量が少ないことなどで、精子が通過できずに妊娠に至らない場合もあります。
免疫の問題免疫異常により女性が抗精子抗体などの抗体を持っていると、
子宮内への精子の侵入を妨げるため不妊となります。
なかでも精子不動化抗体と呼ばれる抗体は、運動率の高い精子であっても子宮内や卵管内で精子の通りを阻害してしまうことがあります。また受精する際も、卵子と精子の融合を阻害してしまうため不妊につながります。

男性側の原因

男性側の主な不妊症原因としては、遺伝子的要因や性機能不全による先天性のものと、生活習慣などによる後天性なものがあります。
多くは精子に関わるものがほとんどで、主に以下が挙げられます。

  • 無精子症(精子が確認できない、または運動率が低い)
  • 精子無力症(運動率が高い精子が少ない)
  • 乏精子症(精子の数が極端に少ない)
  • 閉塞性無精子症(精子の運搬ができない)
  • 精索静脈瘤(精子が作りにくい)

その他の原因として、ストレスや運動不足などによる勃起不全なども挙げられます。

詳しくはこちらの記事でも解説しています。
>「男性不妊になりやすい人の特徴は?原因や検査についても解説」を読む

双方に考えられる原因

男女双方に考えられる原因として、生活習慣などによる後天的な要因があります。例えば、ストレス・過度なアルコールの摂取・喫煙・肥満・過度なダイエットなどが、卵子や精子の質の低下を招いてしまいます。

遺伝的・先天的な原因はもちろんですが、生活習慣も不妊に関係しています。妊活や不妊治療に取り組む際は、生活習慣の見直しが必要不可欠です。

年齢と不妊症の関係

不妊症になるもうひとつの大きな原因は、年齢です。年齢は妊娠率に大きく関わり、年齢が高くなるほど不妊症の確率も高まります。
特に女性は、35歳を過ぎると妊娠率が落ちるといわれています。また男性も同様に、加齢とともに精子の質が低下する傾向にあります。

ここまでご紹介してきたように、不妊症の原因には先天的なものと後天的なものがあり、いずれも治療や予防をすることで解消できるケースがあります。
しかし年齢となると根本的な治療はできないため、「子どもが欲しい」と思ったタイミングで不妊検査や不妊治療を検討することをおすすめします。不妊症の定義は1年とされていますが、年齢によってはすぐに治療に取り組んだ方がよいケースもあります。

不妊症に悩んだら、何から始めればいい?

子どもができずに悩んでいる方は、まずは検査を受けてご自身やパートナーの身体の状態を知ることをおすすめします。

一般的な不妊検査では、子宮や卵巣、ホルモン分泌の状態を調べます。男性の場合は精液検査で精子の状態を調べます。不妊かもしれないと思ったら、パートナーとよく話し合い、まずは一緒に検査を受けてみましょう。

不妊治療の種類と流れ

不妊治療にはステップがあり、医師の診断のもと段階ごとに治療法を切り替えながら、結果が出るまで徐々にステップアップしていくのが基本です。原因や年齢によって適応となる治療は異なりますが、原因が特定できない場合などはステップアップ治療を検討します。

ここではステップごとの不妊治療の種類と流れをご紹介します。

不妊症の検査

治療を開始する前に、必ず不妊症の検査を受けます。
女性の検査では、採血による基礎ホルモン検査・卵管検査・超音波検査などが主な検査項目です。低温期や高温期など生理周期に合わせて、それぞれ検査を実施します。

男性の検査では、精液検査や各種ホルモン検査などがあります。
一般的な不妊症の検査で原因が特定できない場合は、さらに詳しい検査を実施するケースもあります。

タイミング法

「タイミング法」とは、排卵日を把握することで最も妊娠しやすいタイミングに性交をする方法です。医師の指導をもとに、月経周期や過去の排卵を把握してから排卵日を想定し、より効果的な性交タイミングを計画します。
タイミング法で妊娠に至らなかった場合は、人工授精が次のステップとなります。

人工授精

人工授精

「人工授精」とは、運動率の高い精子を、排卵日にあわせて子宮内に注入する不妊治療です。

超音波で卵胞の発育を計測し、人工授精をおこなう日付を決定します。 人工授精当日は遠心処理した精液をカテーテルを使って子宮内に注入します。
人工授精で妊娠に至らなかった場合は、体外受精にステップアップします。

人工授精(AIH)とは:治療の流れや妊娠率について

体外受精

体外受精

「体外受精」とは、女性の卵子を体外に取り出し(採卵)、男性の精子と結合させる、より高度な生殖補助医療です。

主な流れは、薬を使って卵胞を育て、採卵できるようになるまで育てます。その後、採取した卵子を男性の精子と体外で結合させ、できた受精卵(胚)を子宮に戻して着床させます。
体外受精を数回トライして妊娠に至らなかった場合は、顕微授精へ進みます。

体外受精(IVF)とは:治療の流れと当院のポイント

顕微授精

顕微授精

「顕微授精」はと同じく生殖補助医療のひとつですが、体外受精とは受精の方法が少し異なります。体外受精はシャーレの中で卵子と精子を掛け合わせ自然に受精させるのに対し、顕微授精では一個の卵子に対し一個の精子を直接注入して授精をさせます。

精子の数が少ない、受精障害があるなどといった理由で体外受精では受精に至らなかった場合に、顕微授精が次の選択肢となります。

顕微授精(ICSI)とは:方法や料金について

不妊症にお悩みの方へ

不妊症は、夫婦が1年以上妊活して妊娠に至らない場合と定義されています。不妊症の原因は男女双方にあり、また年齢を重ねるごとに不妊症になる確率も高まります。まずは「子どもが欲しい」と思ったタイミングで、不妊検査を受けてみるとよいでしょう。

六本木レディースクリニックでは、一人一人の年齢や身体の状態に応じたオーダーメイドの不妊治療をご提案しています。不妊症にお悩みの方は、お気軽にカウンセリングにてご相談ください。

監修医師紹介

小松 保則

六本木レディースクリニック

小松 保則医師

(こまつ やすのり/Yasunori komatsu)

プロフィールを見る

  • 経歴
  • 帝京大学医学部付属溝口病院勤務
  • 母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
  • 国立成育医療研究センター不妊診療科
  • 緑風荘病院 血液浄化療法センター
  • 六本木レディースクリニック勤務
  • 資格・所属学会
  • 日本産科婦人科学会 専門医
  • 日本産科婦人科学会
  • 日本抗加齢医学会
  • 日本産科婦人科内視鏡学会

体外受精・不妊治療の六本木レディースクリニック