体外受精(IVF)とは
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体外受精(IVF)とは?
体外受精(IVF: In Vitro Fertilizationの略)とは、採卵した卵子と精子を体外培養環境の下で混ぜ合わせて、精子自身の力で受精させる方法です。
卵子を一旦身体の外へ取り出し、卵子1個あたりに約10万個の精子をふりかけて、培養庫の中で自然に受精するのを待ちます。受精率は一般的に約60~70%といわれています。受精を確認して受精卵(胚)を培養してから子宮内に戻し、妊娠を試みる高度な不妊治療です。
生殖補助医療(ART)のひとつ
体外受精(IVF)は、より高度な技術を要する生殖補助医療(ART)のひとつであり、一般的な不妊治療で妊娠が難しい方のためのステップアップした治療法です。
生殖補助医療(ART)の詳細はこちらのページでも解説しています。
人工授精との違い
一般的な不妊治療でおこなわれる人工授精とは、排卵のタイミングに合わせて、管を使って子宮の中に精子を注入する方法です。子宮内に精子を注入したあとは、精子が自分で卵管内に移動して卵子と出会い、自然に受精できなければ妊娠に至りません。人工授精は体内で受精させるため、いわゆる自然妊娠に近い方法です。
これに対して体外受精は、身体の外で受精させます。卵子を体外に取り出す「採卵」や受精卵(胚)の「培養」、培養した胚を子宮内に戻す「胚移植」などの高度な操作が必要という点で、人工授精とは大きく異なります。
顕微授精との違い
生殖補助医療(ART)のひとつである「顕微授精(ICSI)」と体外受精(IVF)との違いについてもみてみましょう。顕微授精(ICSI)と体外受精とは、「採卵」、「培養」、「胚移植」を要する点は共通していますが、採卵後の受精方法(操作)に違いがあります。
体外受精は、卵子1個あたりに約10万個の精子をふりかけて受精させます。受精率は一般的に60~70%程度です。
一方、顕微授精(ICSI)は、顕微鏡をみながら細い管(マイクロピペット)で精子を1個だけ吸引し、それを卵子の卵細胞質内に直接注入して受精させる方法で、受精率は一般的に70~80%程度で、体外受精よりも受精率が高い傾向です。
2022年(令和4年)4月から保険適用となりました
2022年4月より、体外受精をはじめとした基本的な不妊治療が保険適用となりました。
これまで金銭的な事情により不妊治療が叶わなかった方でも、治療に取り組みやすくなったのは朗報です。
ただし体外受精の場合、治療開始時の女性の年齢が43歳未満であることと、回数にも制限が設けられています。また、保険診療で受けられる医療機関は、厚生労働省のホームページに掲載されている医療機関に限りますので、事前に確認が必要です。
なお、六本木レディースクリニックは不妊治療・体外受精専門の医療機関として掲載されております。
体外受精のメリット
体外受精のメリットは、次のような点があげられます。
- タイミング法や人工授精よりも受精率が高い
- 卵管に問題がある場合も受精できる
- 顕微授精と比べると卵子への負担が少なくて済む
体外受精は1つの卵子に約10万個の精子をふりかけて受精させるため、受精率が高くなります。AIHなどをして妊娠しない等の原因不明不妊や、卵管の異常が不妊の原因である場合、体外受精が適応となります。
精子の動きなどが原因の場合も同様に有効です。また、精子を直接卵子に注入させる顕微授精と比べて、卵子を傷付けるリスクが少ない方法でもあります。
体外受精のデメリット・注意点
一方、体外受精のデメリットや注意点は、次のような点があげられます。
- 治療期間が長く、通院回数が多くなる
- 身体に負担がかかる
- 受精をしたとしても着床するとは限らない
- 排卵誘発による副作用のリスク
体外受精は受精率が高い不妊治療ですが、治療期間が長く、通院回数も多くなります。仕事と日常生活を両立するには、医師と相談してしっかりスケジュールを立て、日程調整をおこなう必要があるでしょう。
採卵や胚移植などの高度な技術を要し、ホルモン剤も使用するため、身体には多少負担もかかります。また受精率が高いことがメリットでしたが、必ずしもそのあと妊娠するとは限りません。着床率に問題がある場合は、別の治療法が適応になることがあります。
体外受精の対象となる方
体外受精は、比較的年齢が高い場合や一般不妊治療(タイミング法・人工授精)では難しい場合に適応となります。
一般不妊治療で妊娠が困難な原因として、以下が考えられます。
卵管・子宮に原因がある不妊
子宮内膜症による卵管周辺の癒着や、卵管に閉塞や狭窄がみられる場合、不妊の原因になる場合があります。
また子宮筋腫や子宮内膜ポリープがある場合も、受精卵が着床できずに不妊の原因になります。
免疫性不妊
何らかの免疫異常によって、精子不動化抗体と呼ばれる精子の運動を妨げる抗体や、卵子の成長を妨げる抗体を持つ場合があります。
これらの抗体によって受精や妊娠が難しいケースがあります。
男性不妊
精子の数が少なかったり運動率が悪い場合は男性不妊となり、妊娠が難しい場合があります。
原因不明の不妊
不妊治療の検査をしても原因が明らかにならない場合があります。
タイミング法や人工授精を試みても妊娠が叶わず、ステップアップとして体外受精を受けるケースがあります。
体外受精の流れ
体外受精(IVF)の流れをご説明します。
Step1.
体外受精・胚移植法についての説明と
スケジュールの確認
医師より体外受精・移植法の説明やスケジュールの確認をさせていただきます。必ずご夫婦2人でお越しください。
Step2.
卵巣刺激(排卵誘発)
質のよい成熟した卵子を数多く採取することが、体外受精(IVF)の妊娠率向上につながります。
自然に育った1個の卵子を採卵するのは効率が悪いため、受精に適した卵子をより多く採卵できるよう、排卵誘発剤(FSH/HMG製剤など)で多くの卵胞を発育させます。
排卵誘発の方法については、AMHの値や月経中のホルモンの値に基づき、患者さまに合った方法を選択します。
経膣超音波により卵胞径が18mm前後の大きさになったこと確認したのち、点鼻薬や注射で卵子の成熟を促します。おおよそ33〜36時間後に採卵する流れになります。
※排卵誘発剤を使用すると、通常より早く排卵が起きます。タイミングよく採卵するために、数日間の通院が必要です。万が一通院が難しい場合はご相談ください。
Step3.
採卵
卵巣から卵子を採取する処置です。
経膣超音波装置を使って超音波画像を見ながら採卵専用の針で卵胞を刺し、卵胞液と卵子を採取します。
六本木レディースクリニックでは患者さまの痛みに対する不安を極力取り除くため、麻酔を使用した安心無痛採卵を実施しております。
Step4.
媒精
卵子を体外培養環境下で精子と受精させることを媒精といいます。
具体的には、体外で培養し、成熟させた卵子1個あたりに、約10万個の精子をふりかけて、培養庫の中で自然に受精するのを待ちます。
媒精には体外受精(IVF)のほかにも、顕微鏡下で精子1個を直接卵子の中に注入する顕微授精(ICSI)があります。
Step5.
受精の確認
採卵翌日の朝、顕微鏡で正常に受精できたかを確認します。
正常に受精して分割を始めた状態を胚と呼びます。
Step6.
胚発生
採卵後の受精卵は2日後に2~6細胞に分裂します。さらに3日経過すると6~8細胞に分裂していきます。
このように細胞分裂を何度か繰り返し、5〜7日目には着床する間際のステージへと発育します。これを胚盤胞(はいばんほう)といいます。
Step7.
移植
当院では採卵後2~3日目に初期胚を、もしくは5日目に胚盤胞を移植します。
また、経腹エコーを使用し、子宮内膜の厚さや移植位置を確認しながら移植をおこないます。
培養士が移植専用の柔らかいカテーテルを用いて胚を吸い上げ、医師が子宮内膜を傷つけないように子宮底から約1〜2cmの箇所に移植します。
移植後はお着替え、お会計を済ませたのちご帰宅いただけます。ご帰宅後は、過度な運動は避ける必要がありますが、翌日からは通常の生活をしていただいて構いません。
Step8.
妊娠判定
胚を移植してから約10日後に血液検査で妊娠判定をおこないます。
体外受精にかかる期間とスケジュール
体外受精にかかる期間は、事前の不妊治療の検査を含めて3ヵ月程度かかるといえます。事前検査から胚移植までが1〜2ヵ月程度、胚移植から妊娠がわかるまでが2週間程度となります。
ただし、実際の期間やスケジュールは患者さまの年齢や状況、治療計画によって個人差があるので、あくまで目安として考えてみてください。
体外受精の期間とスケジュールの詳細はこちらの記事でも解説しています。
胚を移植してから約10日後に血液検査で妊娠判定をおこないます。
体外受精による妊娠率
2021年に日本産科婦人科学会が公表したデータによると、体外受精を含む高度生殖医療の妊娠率は、〜29歳で48.6%、30~32歳で47.4%、33~35歳で44.1%、36~38歳で39.1%となっています。
当院の治療における2023年の妊娠率は、日本産科婦人科学会で公表された妊娠率よりほとんどの年代で上回る実績を残しています。
日本産科婦人科学会(※1) | 六本木レディースクリニック(※2) | |
---|---|---|
~29歳 | 48.6% | 52.7% |
30~32歳 | 47.4% | 58.0% |
33~35歳 | 44.1% | 55.4% |
36~38歳 | 39.1% | 45.5% |
39~41歳 | 30.3% | 37.9% |
42~44歳 | 18.1% | 27.5% |
45歳~ | 7.3% | 16.4% |
※1 出典:日本産科婦人科学会、2021年のARTデータブックのデータを使用。妊娠周期数/移植周期数より算出
※2 出典:六本木レディースクリニック「当院の治療実績」
妊娠率に関する詳細は、こちらの記事でも解説しています。
体外受精の場合、何回目で妊娠することが多い?
妊娠に至らない場合、体外受精の治療を何度か繰り返すことになります。
体外受精の妊娠率は個人差があり、年齢や身体の状態によって異なります。
そのため一概に断定することは難しいですが、不妊治療の統計上は4回目で妊娠する割合が多いといわれています。
1回目の妊娠率は20%程度、4回目になると90%程度に高まるといいます。
副作用や合併症のリスク
体外受精(IVF)では、排卵誘発剤の使用や、採卵の行程などで副作用が発生するリスクがあります。具体的には、排卵誘発剤の刺激によって卵巣が腫れる卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症するリスクがあります。OHSSとは、過剰に卵巣が刺激を受けて卵胞が一気に発育してしまうことで、卵巣が腫れあがり、腹水や吐き気などの症状が現れます。また、排卵誘発剤の作用により、双子などの2人以上の子どもを同時に妊娠する、多胎妊娠が起きるなどのリスクもあります。その他、ごく稀に採卵時に腹腔内出血や感染症などの合併症が起きるリスクもあります。
体外受精に関してよくある質問
体外受精(IVF)に関してよくある質問に回答します。
採卵の痛みはありますか?麻酔などについて知りたいです。
当院では安心して採卵をお受けいただくため、静脈麻酔による「無痛採卵」を採用しています。患者さまは意識のない眠った状態で採卵を終えることができ、採卵時も20Gの細い針を使用します。麻酔用の点滴の針が苦手な方にはテープタイプの麻酔を貼って穿刺(せんし)の痛みを軽減できますので、お気軽にお申し付けください。
※静脈麻酔を希望されない方には、局所麻酔や座薬の痛み止めを使用して行うなどの選択肢がありますのでご安心ください。
採卵できる日が少なくても治療は受けられますか?
採卵できる日が少ないという患者さまも治療をお受けいただけます。
一度に採卵できる卵子の数には個人差があり、もともと状態の良い卵子が少ない方の場合、一般的な自然周期での採卵では採卵できない月が続くことがあります。当院では、採卵周期ごとの検査によってできるだけ多く採卵できそうな周期を見極め、患者さまの状態に合った排卵誘発を併用しながら採卵をおこないます。
精液検査や体外受精(IVF)に使用する精液は自宅でも採取できますか?
お仕事などでご主人の受診が難しければ、ご自宅で採取していただき、奥様が2~3時間以内にクリニックにお持ちいただければ問題ありません。専用容器をお渡しいたしますのでご相談ください。
関連する検査や治療方法
体外受精(IVF)に関連する検査や治療方法について解説します。
顕微授精
顕微授精もまた生殖補助医療(ART)のひとつであり、顕微鏡をみながら細い管(マイクロピペット)で精子を1個だけ吸引し、それを卵子の卵細胞質内に直接注入して受精させる方法です。ICSI(Intracytoplasmic Sperm Injectionの略)ともいいます。ICSIの受精率は一般的に約70~80%といわれています。
ERA検査
顕微授精もまた生殖補助医療(ART)ERA(Endometrial Receptivity Array)検査とは、良好胚を3回以上移植しても着床しない(反復着床不成功)方のために、最適なタイミング(着床の窓)を遺伝子レベルで調べるための検査です。
自然周期の場合は排卵を確認してから5日目、ホルモン補充周期の場合は黄体ホルモンを開始して5日目に子宮内膜の組織を採取し、移植される側(子宮内膜)の状態が着床に適しているかどうかを判別します。
卵子凍結
卵巣から状態の良い卵子を採取し(採卵)、未受精の状態で凍結保存する技術です。
妊娠しやすい若い卵子を保存しておくことで、高齢出産になってしまった場合でも、染色体異常の発生確率を低下させることができます。
監修医師紹介
- 経歴
- 帝京大学医学部付属溝口病院勤務
- 母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
- 国立成育医療研究センター不妊診療科
- 緑風荘病院 血液浄化療法センター
- 六本木レディースクリニック勤務
- 資格・所属学会
- 日本産科婦人科学会 専門医
- 日本産科婦人科学会
- 日本抗加齢医学会
- 日本産科婦人科内視鏡学会
体外受精・不妊治療の六本木レディースクリニック